こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

世界の納豆をめぐる探検(第443号)

高野さんが!たくさんのふしぎに!! 今年度のラインナップを見たときの驚きときたら。思わず声をあげてしまったくらいだ。 角幡唯介(『極夜の探検(第419号)』)のときもびっくりしたけど、高野さんはそれ以上だった。まあ二人は探検部の先輩後輩同士、い…

ぼくの博物館(第280号)

ときどき「たくさんのふしぎ」で、不思議な感じの作品に出会うことがある。 『小さな卵の大きな宇宙(第166号)』然り、『いろ いろ いろ いろ(第203号)』然り。 この『ぼくの博物館』もその一つだ。 夜明け前*1「ぼくの博物館」をふらりと訪れたのは、一…

大きなヤシの木と小さなヤシ工場 (たくさんのふしぎ傑作集) (第89号)

『外国の小学校 (たくさんのふしぎ傑作集) (第13号)』で、インドネシアの小学校(ジャワ島スメダンにあるパサレアン小学校)の取材通訳を担当した、福家洋介氏による「ふしぎ」。 福家さんはかつて、スメダン近くにある村で暮らしていたことがある。今回訪…

コンクリートってなに?(第442号)

朝、ニュースを見てたら、コンクリートに関するトピックが紹介されていた。 『NHK NEWS おはよう日本』で自己治癒コンクリート『Basilisk』が紹介されました。 | AIZAWA 微生物を利用してひび割れなどを“自己治癒”するという。夢のような技術だ。 自己治癒コ…

山と海をつなぐ川のおまつり(第272号)

「たくさんのふしぎ」が取り上げてきたテーマの一つに「お祭り」がある。 『ぼくらの天神まつり (たくさんのふしぎ傑作集) (第48号)』 『つな引きのお祭り(第108号)』 『山と海をつなぐ川のおまつり(第272号)』 『絵で読む 子どもと祭り(第400号)』 …

アナログ? デジタル? ピンポーン! (たくさんのふしぎ傑作集)(第63号)

ちょっと前、こんなまとめが話題になっていた。 京大での授業で「そろばんはアナログではなくデジタルです」と言ったら「そろばんがデジタルとはどういうことでしょうか?」という学生がいた - Togetter おそらく、アナログとデジタルという言葉がもつイメー…

空とぶ宝石 トンボ(たくさんのふしぎ傑作集)(第100号)

毎朝、新聞を取りに行くついでに、マンションの非常階段を上がっている。運動不足解消のためだ。 我が家は、この町にしては珍しい高層マンション*1だ。周囲に田園風景が広がるなか、虫の季節は夜、巨大な誘蛾灯状態になる。まんま誘蛾灯でガの種類は本当に多…

風車がまわった!(第197号)

一編の短編映画を見ているようだ。 舞台となるのはデンマークのサムスー島。チーズ好きの方はサムソーの名でご存知かもしれない。 主人公はもちろん「風車」。表紙の風車そのものだ。 この風車は木でできている。屋根は茅葺き。まるで農家の小屋のようだ。 …

はしをわたらずはしわたれ (たくさんのふしぎ傑作集)(第74号)

“かべ”という身近なものをテーマに、軽やかな絵本(『かべかべ、へい!(第114号))を作ってみせた小野かおる。それに先駆けて描かれたのが“はし”。「橋」だ。 今回も、軽さに対して内容は盛りだくさん。 橋の歴史、橋を支えるしくみ、橋の種類、橋のかけ方…

海中を飛ぶ鳥 海鳥たちのくらし(第398号)

鳥は、人間と同じあたたかい血をもつ恒温動物です。気温に左右されず体温を37〜39度にたもっているため、寒い場所で生きられるものもいます。体温をたもつために、体の中で脂肪をもやしつづけています。脂肪のもとは食べものなので、鳥は生きるために食べつ…

からだの中の時計(第440号)

今年も彼らがやってきた! 彼らとは渡り鳥。 マガン、シジュウカラガン、オオハクチョウ、コハクチョウ、オオヒシクイなどなど……そして種々のカモたち。 なかでも大好きなのがマガンだ。恐ろしいほどの数で見せつけてくる群れのパワーも、決して警戒心を緩め…

シャチのくらし 伝統を受けついで生きる(第441号)

表紙からつかみは完璧だ。 シャチというと大海原でゆうゆうと泳ぎまわるイメージがあるが、主人公シャチの姿は緑濃き森に沈んでいる。一見沈んでいるようには見えるが、黒々とした体躯を光らせ、白いしぶきを上げる様子は存在感たっぷりだ。 なかの写真も素…

ニホンミツバチと暮らす(第283号)

『ハチヤさんの旅 (たくさんのふしぎ傑作集) (第26号)』は、「蜂屋」つまり仕事として「蜂と旅する」話だった。 一方、こちら『ニホンミツバチと暮らす』は、趣味として「蜂と遊ぶ」話になる。 舞台となるのは宮崎県日向市東郷町そして椎葉村。宮崎県の県…

ダーウィンのミミズの研究 (たくさんのふしぎ傑作集)(第135号)

帰宅しておやつを食べる息子といっしょに、録画した「サイエンスZERO」を見ていた。 「“地中の王”驚異の実力 きっとミミズが好きになる」 - サイエンスZERO - NHK 冒頭紹介されたのはこの言葉。 「この取るに足らない生き物よりも 世界にとって重要な役割を …

ぼくたちのロボット(第265号)

乙武洋匡氏が、義足歩行にチャレンジしたというニュースを見た。 50メートル超を義足歩行 作家の乙武さん「胸いっぱい」:時事ドットコム 私はこのプロジェクトを初めて知って、それまでの経緯など何も知らないにもかかわらず、映像を見て、なぜだか胸がい…

アマゾン・アマゾン (たくさんのふしぎ傑作集)(第70号)

みなさん、ぼくのいるところがどこかわかりますか。ぼくは今アマゾン川にいます。それも本流ではなくて、そこにそそぎこむ「小さな支流」にいます。支流でもこんなに広いのです。 2〜3ページにうつる写真はまるで海のようだ。アマゾンといえばイメージする熱…

コケのすきまぐらし(第439号)

先日、子供の帰宅時間に間に合わなくて、駐車場で待ちぼうけ、ぽけーっと地面を見てる様子に出くわした。 ー実力テスト、間違えたわーこれ。 なんの話? ー雄株と雌株。やっぱ逆と思って書き直したら間違った。 あーコケ、ね。 子供は中学生。なんちゃらテス…

南米アマゾン 土を食う動物たち(第418号)

アマゾンは謎だ。 今や世界最大級となったオンラインストアが、その名を冠したのもわかる気がする。アマゾンは世界最大規模を誇る河川であり、謎に満ちたわくわくするような場所なのだ。この本だってアマゾンと名はついてるけれど、舞台となるのはほんの端っ…

家をかざる(第409号)

現在は残念ながら終了してしまったが、昨年の一斉休校期間に合わせて「たくさんのふしぎ試し読み」という企画が公開されていた(『ポスター(第258号)』参照)。 参照エントリーで、 ページ見開きの折れ目、「のど」の部分がないと、こんなにきれいに見える…

かんころもちと教会の島(第438号)

かんころもちは長崎は五島列島の郷土菓子。 本号はかんころもちをめぐる、土地と時間のお話だ。 舞台となるのは四つ。「佐世保のお菓子屋さん(※地名は本文では明記されていない)」「中通島」「小値賀島」「野崎島」だ。 作者は、いつもかんころもちを買う…

りんごの礼拝堂(第273号)

りんごの礼拝堂はフランスにある。 サン=マルタン=ド=ミューという小さな村にある。 サン・ヴィゴール・ド・ミュー礼拝堂だ。「りんごの礼拝堂」になる前は、廃寺だった。 建てられたのは500年も前。そのため、長いあいだ風雨にさらされ、古ぼけてみすぼ…

きみの楽器はどんな音 (たくさんのふしぎ傑作集)(第54号)

音はみえないけれどいつもわたしたちのまわりにあります。これからかんたんな工作で、音をつくり、楽器をつくり、みえない音の世界を探検しましょう。 はじめに糸電話をつくります。 ……かんたん?え? はっきりいって“かんたん”なのは、糸電話といくつかの工…

ギアナ高地 謎の山 テプイ(第437号)

表紙の濃い緑、一見地味に感じられると思うが、目の前で見るとなかに吸い寄せられてしまいそうなパワーがある。おもて表紙片面だけでいっぱいいっぱい。これを両面見開きで展開したら、すごいことになってしまいそうだ。 中の写真も圧倒的なエネルギーに満ち…

できたぜ! かくれ家(第196号)

素晴らしい表紙、素晴らしいタイトルではないか。 センターの子の面構えときたら、ザ・男の子という感じ。脇をかためる子たちの表情もいい。奥の少年の帽子が巨人でも阪神でもなく、オリックスの野球帽というのも渋い。 この4人は同じ小学校に通う4年生。…

釣って 食べて 調べる 深海魚(第436号)

まず深海とは? 深海とは海面から200メートルより深い海のこと。 明確な定義があるわけではないらしい(深海 - Wikipedia) 。 日本は深海がご近所にある国。相模湾、駿河湾、富山湾、室戸沖など、数十分も船を走らせればすぐ深海にアクセスできるのだ。深海…

聴導犬ものがたり ジェミーとペッグ(第176号)

聴導犬とは? 漢字からわかるとおり、聴覚に障害がある人たちの暮らしを助ける犬だ。 作者はイギリスで、耳の不自由な青年ジェミーと、パートナーの聴導犬ペッグに出会う。ジェミーは13歳で発症した病気治療の後遺症で、19歳には完全失聴してしまう。大好き…

チューの夢 トゥーの夢 難民キャンプの子どもたち(第151号)

毎日あそびにくる子どもたちの中に、絵本が大すきで、なんでもやりたがる、ふたりのやんちゃぼうずがいました。 10才くらいの男の子。名前は、ひとりはチュー、もうひとりはトゥーです。 チューは、お話を読むだけでなく、お話を作って書いたり、絵を描いた…

昆虫少年の夢 オオムラサキ舞う森(第302号)

先日、草山万兎こと河合雅雄先生が亡くなられた。 「たくさんのふしぎ」では、 『庭にできたウサギの国 (たくさんのふしぎ傑作集) (第4号)』 この『昆虫少年の夢 オオムラサキ舞う森(第302号)』 そして『野生動物の反乱(第313号)』 3冊を手がけている…

なぜまるい? (たくさんのふしぎ傑作集)(第49号)

なぜまるい?の“まるい”は、どちらかといえば立体的な“まる”、球体の方のお話だ。 自然は、まるいもの、まるっこいものが好きなようだ。 自然のなかには、なぜまるいものが多い(・・・・・・・・のだろう? 球は、いろいろなものがひとりでになっていく形、…

熱帯雨林をいく(第189号)

舞台となるのは、赤道直下のボルネオ島。主役となるのは熱帯雨林に暮らす動植物たちだ。 古い本ながら、内容は驚きの連続だ。 シメコロシ植物と呼ばれる、恐ろしい樹木。 アリノトリデという、アリと共生する植物。 見たことも聞いたこともないような動植物…