朝、ニュースを見てたら、コンクリートに関するトピックが紹介されていた。
『NHK NEWS おはよう日本』で自己治癒コンクリート『Basilisk』が紹介されました。 | AIZAWA
微生物を利用してひび割れなどを“自己治癒”するという。夢のような技術だ。
コンクリートってなに?
私もわからない。説明できない。だから子供と同じような感覚で読んだ。
でもやっぱりわからなかったんだよなあ。この本を読んでもわかったような気がしない。
その、セメントと水を混ぜた柔らかい状態のものが、なんでかたまってくのか?本文を読めばその仕組みはわかるのだが、いまいちピンとこない。実際に見たことがないからだろうか?
うーん。身近なものの例はないかな。DIYとか。
初心者でもできる!生コンクリートの作り方(DIY) | CMC
セメントの使い方【コメリHowtoなび】 - YouTube
お、何となくわかってきた。『コンクリートってなに?』本文で書かれる「養生」の重要さとか、セメントは石灰石が原料だから強アルカリ、扱いに気をつけなければならないこととか。
つまり『コンクリートってなに?』は、けっこう大きめの話で構成されているのだ。コンクリート自体のミクロな話ではなく、主にコンクリート製造工場、アジテータ車、セメント工場などの仕組みを解説しながら、コンクリートが社会でどう取り扱われているかを描いた本なのだ。
大きめの話である理由は、この本の肝の一つが「インフラを支えるコンクリート」だからかもしれない。明石海峡大橋の工期短縮に貢献した「自己充填コンクリート」や、トンネル工事で使われる「吹付けコンクリート」、ダム建設で使われる「ダム用コンクリート」など、特殊なコンクリートについても詳しく説明されている。
『はしをわたらずはしわたれ (たくさんのふしぎ傑作集)(第74号)』で、橋にかかる力の話に触れたが、その力を支えているのもコンクリートだ。明石海峡大橋の橋台(橋を支える基礎となる部分)にかかる途方もない力を受け止めるのはコンクリートだし、スイスのザルギナトーベル橋は鉄筋コンクリート橋の嚆矢ともいえる存在だ。
なるほど、コンクリートはDIYレベルではなく、大規模建造物を作るためにこそ使われ、改良されてきたのだ。コンクリート自体は、新しい話ではなく、ローマ帝国時代、すでにローマン・コンクリートが存在していた。このコンクリートのおかげで、パンテオンはじめさまざまな巨大建造物が作られ、その堅牢さゆえになお遺跡として残っているのだ。
歴史は古いとはいえ、工業製品としてのコンクリートはまだまだ“若手”の部類だという。今もなお進化の力を秘めた存在なのだ。冒頭紹介した自己治癒コンクリートも、“ひび割れが自然に直るコンクリート”として触れられている。
両観音折り込みページ含め48ページ構成、内容は盛りだくさん。
その盛りだくさんさが、話の中心がどこにあるのか迷ったところかもしれない。ピンとこない、身近なものとして実感するのが難しかったとも書いた。正直、DIYレベルの実験をはさんだり、工事現場でコンクリを打ってるときの見どころとか盛り込んでくれたら、わかりやすいのになあと思ったことは確かだ。しかし、こんなレベルのことは、ちょっと調べたらわかる話だ。せっかく専門家に絵本を作ってもらうんだから、ちょっと調べたくらいじゃわからない、突っ込んだ話を盛り込むべきだと思い直した。“ググればわかる”と言われる時代、科学絵本にどこまでの知識をどれだけどうやって盛り込むか、バランスを考えるのが難しいものだ。
25ページ、自己充填コンクリートの解説で、納豆をかき混ぜる様子のイラストがついているのは、↓この「NATTO技術」を表したものだろうか?面白い。
<2023年1月10日追記>
ローマン・コンクリート自体、実は“自己治癒コンクリート”だったという驚くべき事実が!
古代ローマのコンクリートにはひび割れを「自己修復」する機能があったと判明! - ナゾロジー
専門家すら「材料の質が悪いか、混合方法がずさんなためにできる異物」と予断をもって軽視したものに「古代ローマ人があれだけ優れた建造物を築きながら、コンクリートの製造に手を抜いたとは考えられない」と疑問を持ったのもやはり専門家。ローマン・コンクリートという優れた素材を開発した“かつての専門家”に敬意を表していたからこそできた発見だ。