こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

アザラシに会いたい(第240号)

会いにいけるアイドル」ならぬ「会いにいけるアザラシ」。

といっても、

アザラシは、動物園や水族館で見ることができます。

だから、そんなん珍しいものじゃないでしょ。

でも、野生のアザラシを見たことがある人は少ないのではないでしょうか。 

じつは、北海道各地の沿岸で、野生のアザラシを見ることができるのです。

ぼくの住む天売島という小さな島にも、毎年冬になると、アザラシの群れが上陸します。体にゴマのような斑点があるゴマフアザラシです。

野生のアザラシ。野生のものに「会いにいける」なんて、思ったこともなかった。

が、本当に見たのだ、野生のアザラシを、天売島で。

当時、現地ガイドさんに「ほら、あそこにアザラシいますよ」って遠くに豆粒みたいに見えるやつを教えてもらってとりあえず撮ったけど、どこにいるのか、本当に写っているのかもわからない代物だけがカメラに残されていた……。それでも、野生のアザラシいるんだ!見られるんだ!ってちょっと感動したことだけは覚えている。

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天売島ターミナル&どこかにアザラシが写ってるかもいないかもの海

『アザラシに会いたい』には、もちろん、そんなどうしようもない写真は1枚たりとも載っていない。なんせ作者は天売島に長年くらし、島のこと、島の自然を知り尽くしている人である。

写真が、本当に素晴らしい。写真に目を奪われて、文章が入ってこないくらいだ。でももうそのまんま、アザラシに見惚れてたらいいんじゃないかと思ってしまう。

表紙からして、すごくいい。目を細め、水しぶきを浴びるアザラシ。アザラシ本体は動いてないと思われるのに、水の動きで躍動感あふれる写真になっている。中表紙の、海からヌッと顔を出すようすも実に味がある。水面のきらめきがアザラシを彩っている。

6ページから9ページにかけて、一頭の、眠るアザラシに近づいて撮影する流れ。おだやかに眠るアザラシが、次のページでパチっと目を開けて振り返るさまは最高だ。

ぼくは、このときに見たアザラシの愛らしい表情が大好きになりました。

と書くのもうなずける話である。

 

後半は天売から舞台を移し知床へ。

ぼくは赤ちゃんアザラシに会いたいと思っていましたが、見たことがありません。

ゴマフアザラシは、流氷の上で出産と子育てをする。流氷のこない天売では、赤ちゃんを見られないのだ。北海道では、流氷が流れ着く知床周辺の海で出産する。夏はサハリン沿岸で過ごした後、冬が近づくと南下し、出産組は知床へ、その他越冬組は天売や周辺沿岸などで冬を過ごすようだ。

流氷の海には、アザラシ以外の動物たちもやってくる。至近で並んだオジロワシオオワシの2ショット。オオワシがちょっと翼を広げているところが絶妙だ。シノリガモの派手な色彩も海のいいアクセントだ。そして本号の主役であるアザラシの、ふわふわ赤ちゃん。白い産毛がぬいぐるみみたいだ。かわいすぎない写真が、画面を引き締めている。

この海で出会ったアザラシの赤ちゃんがりっぱに成長し、次の冬に、こんどは天売島で会える日がくることを願いながら、ぼくも知床をあとにしました。

 

アザラシのようすは、どちらかというと前半の天売での写真の方が好きだ。波やうねり、しぶきが写ることで、動きのある写真になっているからかもしれない。流氷の海は動きが少ないので静的な感じがするのだ。

最後のページ、夕陽に赤くきらめく海に、頭がチョコンと出ているところが、中表紙の写真と対をなすようで面白い。裏表紙の幼い?アザラシの表情もかわいらしい。最初から最後まで、アザラシの姿を存分に堪能することができた。

今度天売に行けたら、野鳥だけじゃなくアザラシにも会いにいこう!

近年は、天売でもアザラシの漁業被害が問題になっているようだ。来遊時期が早まり、退去時期も遅くなりで、夏もサハリンに帰らず一年通して居つく個体も増えている。地元で被害を受ける人たちにとっては、アザラシかわいい!自然すばらしい!じゃ済まない問題だろう。ヒグマ然り、野生動物との付き合いは、一筋縄ではいかない難しさをはらんでいる。