こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

図工

風が描く絵 鳥取砂丘(第472号)

「たくさんのふしぎ」の魅力の一つは“未完成”というところだ。 この絵本、実は何度となく読み返している。でもまるでつかめないのだ。鳥取砂丘の絵が。実際行ったことさえあるというのに。 絵は地味そのもの。だって砂と空しかない。 パッと華やぐのは32〜33…

キッピスの訪ねた地球(第111号)

パソコンまわりに本を放置しておくと、夫が手に取ることがある。 『キッピスの訪ねた地球』も興味をひかれたらしい。読み終わって一言「キッピスいいよね」。 その瞬間、ちょっと負けたなあって。 どんなに言葉を連ねて感想を書いたところで「あー面白かった…

かっこいいピンクをさがしに(第468号)

『いろいろ色のはじまり(第463号)』が色の化学なら、これは色の「文化」の本だ。しかも、ピンクという一色にしぼった。 いま「一色」といったが、じゃああなたが思い浮かべるピンクはどんな色だろうか? それを考えると、ピンクは決して一色ではなく、人が…

ロンドンに建ったガラスの宮殿 最初の万国博覧会(第464号)

壮麗な表紙だ。これからどんなお話が始まるのか期待感が高まってゆく。 「たくさんのふしぎ」のロゴは重厚な金で彩られ、いつもならデフォルトの文字で作られる「2023年11月号(第464号)」は絵の中に溶け込ませてある。 本号は、世界最初の万博をテーマに書…

ガラス 砂の宝石(第68号)

ガラスの歴史や製法、種類を紹介した一冊。 始まりは真っ白な砂の山。 オーストラリアから輸入された珪砂だ。ガラスの原料となる。 「砂」というかたちでなくとも、石英が含まれるものは多くある。 だからガラスの歴史は古い(ガラス年表)。なんと紀元前か…

種から布をつくる(第458号)

種から布をつくる? どうやって? タイトルを見た子供たちはそう思うことだろう。 付録「ふしぎ新聞」の「今月号の作者」紹介欄によると、白井仁氏の肩書きは「染織家」。 その名のとおり、染めたり、織ったりするのが仕事ということになる。 作者はその染め…

わたしのマーブリング(第59号)

マーブリングとは、絵の具などを水面に垂らし、できた模様を紙に写し取る技法のこと。 手軽にできるので、学校の図画工作でやるところもあるはずだ。家の子も小学校で作ってきたことがある。 冒頭紹介されるのは、身近にある“マーブリング”。 水たまりに油の…

中にはいってみよう(第306号)

建物がつくり出す「空間」に注目した絵本だ。 「空間」が主役なので、写真にうつる空間に人の姿はほとんどない。人はあくまで空間の引き立て役になっている。 しかしその「空間」の妙を味わうのは人。どれも人のためにつくられた空間だからだ。 ステンドグラ…

ヒトスジギンポ 笑う魚(第328号)

ヒトスジギンポ?初めて聞く名前だ。 夏のはじめ、沖縄本島から船で20分ほど行った水納島(みんなじま)の海で、小さくてかわいい魚にであいました。 南の海なら、どこでもかんたんに見ることができるらしい。 おまけにダイバーに大人気。 人気の秘密はその…

土の家(第295号)

"THE HOUSES MADE BY MUD" こちらはhomeではなく、houseだ(『家をまもる(第445号)』)。 物理的な「家」に注目したお話だからだ。 土の家……ああ、日干しレンガの家とかかな。中東に行ったとき、日干しレンガが積まれているのを見たことがある。 しかし、…

森の小さなアーティスト (たくさんのふしぎ傑作集) (第58号)

英題は"Mimicry in insects"。 昆虫の擬態をテーマにしている。 生きものの擬態を取り上げた子供向けの本は、手をかえ品をかえ出版されている。古くは『自然のかくし絵―昆虫の保護色と擬態』から『なりすます むしたち』まで。作者の今森さん自身『あれあれ?…

風車がまわった!(第197号)

一編の短編映画を見ているようだ。 舞台となるのはデンマークのサムスー島。チーズ好きの方はサムソーの名でご存知かもしれない。 主人公はもちろん「風車」。表紙の風車そのものだ。 この風車は木でできている。屋根は茅葺き。まるで農家の小屋のようだ。 …

りんごの礼拝堂(第273号)

りんごの礼拝堂はフランスにある。 サン=マルタン=ド=ミューという小さな村にある。 サン・ヴィゴール・ド・ミュー礼拝堂だ。「りんごの礼拝堂」になる前は、廃寺だった。 建てられたのは500年も前。そのため、長いあいだ風雨にさらされ、古ぼけてみすぼ…

バルセロナ建築たんけん (たくさんのふしぎ傑作集) (第84号)

通っていた大学近くに、ガウディを思わせる建築物があった。 日本のガウディと呼ばれる男。建築家・梵寿綱インタビュー|美術手帖 通学などの動線から外れていたこともあり*1、チラッとしか見たことはないが、殺風景なビル群の中、そこだけ異様な佇まいを見…

パリ建築たんけん(第117号)

子供のころ、いちばん行ってみたい外国はフランスだった。 大人になったら絶対行く。ルーブルやオルセーで絵を観たり、凱旋門や大聖堂とか名所観光するんだ!と思っていた。 それがどうか。大人になってン十年経つけれど、足を踏み入れてすらいないのだ。い…

光をつむぐ虫(第188号)

光、つむぐ、虫。 発光生物の話だろうか? だがこれは、虫の話ではない。 虫は登場するけれど、光るのは虫ではない。 話のまくらは、小学生の頃の体験。 虫とりにつかれて、ふと空を見上げると、緑の葉のすきまから、まっ青な夏の空がのぞいていました。お日…

写真の国のアリス(第192号)

本号のテーマは写真。 アリスを主人公にすえ、不思議の国ならぬ“写真の国”に迷い込み冒険するという態で描かれている。 本家アリスは風刺漫画家の手で描かれ、グロテスクとも思えるテイストだが、こちらのアリスはメルヘンチックでかわいらしい。本家よりこ…

ポスター(第258号)

ご存知だろうか? しばらく前から、たくさんのふしぎのうち4冊が、無料公開されているのだ。 期間限定なので、いつ終了するかわからない。今のうちにぜひ見てみてほしい。ただし、スマートフォンではなく、パソコンやタブレットで見ることを強くおすすめす…

いろ いろ いろ いろ(第203号)

今回のクリスマスプレゼントは、160色の色鉛筆だった。子供のリクエストだ。箱の中からつぎつぎセットが出てくるのに、えーまだ下にあるよ!と驚く様子が面白かった。 わたしも子供のころ、多色セット欲しかった。ずらっと並んだ色鉛筆。色を見るだけでも…

うれし たのし 江戸文様(第430号)

たまに、なかなか引っかかってこない「たくさんのふしぎ」がある。 私にとって『うれし たのし 江戸文様』は、そんな一冊だ。 そりゃまあ、すべてのことに興味をもてるわけじゃないんだから、当たり前のことだ。このブログでは「たくさんのふしぎ」のバック…

虫の生きかたガイド(第145号)

色数が多いわりに、地味にみえる表紙。なかを開ければ一転、すごくにぎやかな世界が広がっている。あべ弘士ならではのイラストだ。 構成はシンプルだ。 見開き左ページは、ページいっぱいフルカラーで彩られたパワフルなイラスト。 右ページは、解説とメモ的…

夢の庭づくり(第255号)

先日見た「小さな旅」は、北海道で庭づくりに勤しむ人たちの話だった。 NHKオンデマンド | 小さな旅 「わたしの花たち~北海道 ガーデン街道~」 北海道という土地は、庭を造りたくなるようなロケーションなのだろうか?北海道ガーデン街道のほかにも、各地…

カヌー 森から海へ(第199号)

大昔から人は水の上に出た。 大海原へも舟で漕ぎだした。 人が水のむこうに見たのは、いったいなんだろう? そうだ、 ぼくも舟をつくろう! 冒頭、一艘のカヌーが浮かぶ様子が写されている。写真の外枠がグラデーションのように加工されているのが面白い。波…

石のたんじょうび(第212号)

作者のスティーヴン・ギル氏、この人も間違いなく「石に執着する」人だろう。私もたいがい「石に執着する」をキーに何度となく記事を書いているけれども*1。 作者が石に惹かれる理由、それは「変わらない」というところかもしれない。 ほんとは、このまん中…

珪藻美術館 ちいさな・ちいさな・ガラスの世界 (たくさんのふしぎ傑作集)(第411号)

ミミクリーズの特集が珪藻だった。 「けいそう」 - ミミクリーズ - NHK そこで思い出したのが、この『珪藻美術館』だ。 美術館と題され、きらきらしい画像の表紙を見ると、このような“珪藻アート”が中心の本だと思われるかもしれない。 珪藻美術館 ちいさな…

線と管のない家(第420号)

私たち家族は、これまでさまざまな家に住んできた。 一軒家/集合住宅という違いだけではない。電気・ガス・水道などのライフラインも、いろいろなパターンがあった。 電気は大手電力会社10社のものを使ってきたが、オール電化でガスがなかったり、トイレが…

顔の美術館 (たくさんのふしぎ傑作集)(第106号)

東京に住んでいた時、見たいと思った展覧会には、できるかぎり行くようにしていた。いつまた転勤になって、美術展に飢える日が来るとは限らないからだ。 大都市圏以外の地方都市は、美術館へのアクセスがいいとは言えない。たとえ都道府県内に良い美術館や美…

飛行船にのって(第296号)

本というのは失われたもの、失われゆくものの記録でもあると思う。「たくさんのふしぎ」はニッチなもの、耳目を集めにくいトピックを取り上げているが、そういう事物のなかには、ひっそりと消えてゆくようなものもある。 飛行船もその一つだ。 もちろん、飛…

水のかたち(第214号)

山の朝は美しい。 朝焼けに染まる山肌。輝く緑。朝露が日を受けてきらきら光っている。白山に登った時もそうだった。足もとの草には、蜘蛛の巣。露がおりて繊細なレースを作り出している。写真に撮っておきたいと思った。だがしかし。カメラに残されたのは、…

スウェーデンの 変身する家具(第405号)

本号を寝っ転がって読んでいた子供が、 「ねえねえ、スエーデンでは、人んちの森にも自由に入っていいんだって。そこでキャンプしてもいいんだって。すごいねー」 と言い出した。 実はこれ、『森はみんなの保育園(第320号)』にも書いてあったことなのだ。…