身近にいる鳥というのは、かえってその生態を知らなかったりするものだ。
先日、有料のふれあい動物園に行ったが、そこにいたのが一羽のカラス。ペットとして飼われていたようだが、事情があって引き取られて来たらしい。子供がエサやり体験をしたいというのでお店の指導の元やってみたが、なかなかうまくいかなかった。信頼している人からでないと難しいという。カラスはつがいの相手を替えないらしく、オシドリなんて目じゃない(実際のおしどりは繁殖の度つがいを替える)くらいオシドリ夫婦なのだ。
スズメについても、知らないことは意外に多い。
『スズメのくらし(第345号)』の紹介文でも「スズメはとても臆病で、人間が近づけないため、そのくらしぶりはあまり知られていないのです」と書かれているが、確かに観察しようと思って近づけば、すぐさま飛び去ってしまうのがスズメである。
『町のスズメ 林のスズメ』は、スズメ、イエスズメ、ニュウナイスズメという3種の「スズメ」のお話だ。それぞれの種類のスズメが、なぜその場所をテリトリーとしているのかについて書かれている。
○ 北海道では、町や村にはスズメが住み、林の中にはニュウナイスズメがいる。
○ ヨーロッパでは、町や村にはイエスズメが住み、林の中にはスズメがいる。
○ 台湾やヒマラヤでは、町や麓の村にはスズメが住み、山奥の村にはニュウナイスズメがいる。
2種類のスズメが同じ町や村で暮らすことはないという。
そこで、北海道の演習林でスズメとニュウナイスズメについて巣箱かけの実験をし、どうしてそうなるのか理由を探ることになる。
で、この場合、ニュウナイスズメより体の大きなスズメの方が巣箱争いに勝つだろうと思いきや、結果はニュウナイスズメの勝利。林の中では小回りのきくニュウナイスズメが、有利なのだ。
同じようなことが、ヨーロッパではスズメとイエスズメの間で起こったのだろうと作者は推測する。似た鳥同士でも、わずかな体つきの違いがお互いの住み場所や暮らしを大きく変えるのだ。人間の開発などで環境が変われば、スズメたちの生活もまた変わっていくのかもしれない。
挿絵を担当した薮内正幸は「作者のことば」で、次のように言っている。
ずっと昔から人間の近くで生活していながら、ギリギリのところで人を近よせないところがあるのは、長い間、人間をかんさつしていて、人間の性質のよいところも、わるいところも、とっくにご存知!というところでしょうか?
じゃあ、ある場所にどの種類のスズメがいるのか観察してみたら面白いかも?と思ったが、そもそも私の目には、スズメもニュウナイスズメもイエスズメも区別がつかないのだ。飛ぶ鳥の観察というのはつくづく難しい。