小学生の頃、タータンチェック柄の巻きスカートが大好きだった。
巻き終わりが大きめのピンで留めてあるのも、すごく気に入っていた。違う柄のを2着買ってしょっちゅう着ていた覚えがある。クローゼットを見れば、今もタータン柄のシャツや上着がある。どれもやっぱりお気に入りだ。
本号の著者もチェック柄、やはりタータンチェックをこよなく愛する女性だ。小さいころ、スカートや靴下、文房具、部屋のカーテンなどなど、身の回りにはチェック柄があふれていたという。
当時人気のアイドルグループがチェックを身につけていたこともあって、チェック柄は、ちょっとした流行にもなっていました。
と書かれているが、これはもちろんチェッカーズのことだろう。もっとも名前が先にありきで、チェックの衣装は後付けだったようだが。
タータンの“本場”はイギリス。しかし彼女を「眠っていたタータン好きのわたしの魂に火がつきました」という状況に陥らせたのは、イギリスではなく、カナダだった。『赤毛のアン』を愛読していた作者は、舞台となったプリンス・エドワード島に留学するという夢を果たす。そこのお土産屋さんで出会った布地が「プリンス・エドワード島・タータン」だった。「このタータンはプリンス・エドワード島州がみとめた“公式”なタータンである」という言葉に疑問をもった作者は、歴史を調べ始めることになる。
カナダのタータンは、スコットランドからの移民の手によるものであること。私たちが「イギリス」と呼んでいる国は、実は4つの国(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)の集まりであったこと。タータンはスコットランドに由来するものであること。タータンは単なる柄ではなく、元は“織りもの”であり、“織ることによって生まれるチェック柄”であるということ。
タータンを巡る旅は、スコットランドのエディンバラから始まり、テイラーやタータン工場を回った後、ついに“本場”であるスコットランド北部のハイランド地方に行き着く。ハイランド地方の歴史博物館やタータン博物館を訪れる作者。タータンが生まれ、その柄が「イギリス」に、そして海外にまで広がっていく歴史をひもといていくのだ。
本書を読めば、タータンの歴史と背後にある文化を知ることができる。定義を知れば、タータンを見る目が変わること請け合いである。私の持っているシャツの柄、近所の学校の制服、デパートのショッピングバッグ……身近にはタータンがあふれているけれど、こんな単純なルールで作られていたんだとわかると、自分でも作ってみたくなる。色が無限にある以上、パターンも無限だ。無限であるということは逆に、あるパターンを「自分のもの」とする、自らのシンボルとして決めることにもつながってゆく。先に述べた「プリンス・エドワード島・タータン」のように、州や地域、地方の“公式”なタータンを認めるというのは、歴史的なことばかりでなく、タータンのもつ「自由さ」も関係しているのだと思う。
登録制度など伝統を重んじる一方、無限に自由にパターンを作り出すことができる。タータンは、まさに"Magical Design"なのだ。
タータンチェックから広がる世界 『すてきなタータンチェック』|ふくふく本棚|福音館書店公式Webマガジン
すてきなタータンチェック (月刊たくさんのふしぎ2018年9月号)
- 作者: 奥田実紀,穂積和夫
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2018/08/03
- メディア: 雑誌
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<2021年12月4日追記>
本誌発行時「たくさんのふしぎ」オリジナルタータンを作製していたが、
The Scottish Register of Tartans(スコットランド・タータン登記所)
に正式登録され、晴れて“タータン”となった。
https://www.tartanregister.gov.uk/tartanDetails?ref=12257
ちなみに、伊勢丹の新生タータンはこちら。