こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

空のみち 飛行機と航空管制官(第331号)

先日、式根島に行った。行きは船で、帰りは新島から飛行機に乗った。

飛行機が到着するのは調布飛行場。この飛行場を舞台とする絵本がある。『ちいさなひこうきのたび』だ。かつての転勤先だった鹿児島にいた頃、よく読んでやっていた。場所こそ違えど「ちいさなひこうきのたび」をすることがあったからだ。鹿児島から福岡に飛んだり、広島へ行ったり。どちらの便も日本エアコミューターのプロペラ機だ。広島便など今は無き広島西飛行場への発着で、空から見下ろすかつて住んでいた町(以前の転勤先)の様子に、懐かしさと寂しさが入り交じった気持ちを抱いたことを覚えている。

鹿児島にいた当時は、のちに調布飛行場近辺に住み、実際に「ちいさなひこうきのたび」をすることになろうとは夢にも思っていなかった。引越して間もない頃、さっそく暇つぶしに子供を連れ遊びに行ったものだ。何にもない小さな飛行場だけれど、展望デッキからの眺めはやっぱりわくわくする。ロビーには、数冊の子供用絵本とともにこの『ちいさなひこうきのたび』が置かれている。

新島からのフライトは30分余り。子供は短い飛行中、あれは大島だ、ここはよく釣りに行く場所だとか興奮気味に話し続けていた。到着間近に見える景色は『ちいさなひこうきのたび』の表紙のままに、よみうりランド多摩川京王線などがそれこそミニチュアのように広がっていて、思わず無心に眺めつづけてしまった。空から自分の町を見るなどなかなか無い機会だ。

帰宅した後『ちいさなひこうきのたび』を読み返したのだが、関連して『空のみち 飛行機と航空管制官』 を借りてきてやったら、案の定食いついた。発行時に読んでやっているが、やはり覚えていなかった。

これはタイトルの通り、航空管制についての絵本だ。舞台となるのは旭川ー羽田便。AIRDOの運航便だ。なかなか渋い。客室の様子を挟みながらも、ひたすらパイロットと管制官とのやり取りで話が進められてゆく。航空関係の絵本は数多あれど、管制の様子を詳しく描いたものは他にないのではないだろうか。管制というのは、飛行機や空港、空港ではたらく車、そして客室乗務員など、乗客が直接見たり関わったりする“花形”ではないからだ。裏方、しかも運航に欠かせない重要な裏方にスポットを当てたこの本は、なかで描かれる「フライトの順調さ」も相まって、地味で平坦な印象を受けてしまう。しかし、運航において平坦=順調であるというのは大事なことだ。何もしないで順調なのではない。順調へ導く人がいてこそ、安全な「空のみち」が作られているのだ。

『ちいさなひこうきのたび』にも、管制塔の中の様子が描かれている。パイロットと管制官のやり取りも文中に登場していて、大島空港に到着する際には、

かんせいかんが かっそうろに ふいている かぜの ほうこうや 

つよさを しらせてくれます。

というように、管制官の役割についてもきちんと書かれている。普段意識することはないけれど、管制官は私たちの楽しい飛行機の旅を支えている一人なのだ。

『空のみち 飛行機と航空管制官』には、いくつかウェイポイントが出てくるが、中でも面白いのが千葉県にある“ミッキーポイント”。本書の地図によるとチーバくんの腹あたりにあるので木更津近辺かと思われる。浦安付近ではないのが謎なところだ。