鹿児島県の、とある市に住んでいたころ、日課は「桜島の風向」予報を見ることだった。
引越して間もないころ、干したものを取り入れようとした時のこと。布団に点々と、砂のような粒がついていることに気がついた。洗濯物を見れば同じようなのがうっすらと付着している。
桜島の灰だった。
窓を開けっ放しにした部屋の床は、一面ざらざら。あわてて掃除機をかける。
以来、かならず降灰情報を見るようになった。
とはいえ、注意することといえば、せいぜい窓を開けっ放しにしないということだけ。洗濯物は取り入れ時にパンパンとはらい、布団干しはあきらめて布団乾燥機を買った。
参ったのは子供の外遊び。公園に行けば、ベンチに灰、すべり台にも灰、ブランコにも灰……とにかくどこにでも灰がついてくる。近所の公園は芝生が広くて気持ちのよい所なのだが、やはり一面灰。それでも慣れというのは恐ろしいもの、1年も経たないうちに、こういうものだと気にならなくなってしまった。
私はコンタクトレンズ(ハード)を使っていたが、これも早々にあきらめた。
車で桜島方面に出かけると、パラパラと灰が降るのが「見える」。フロントガラスを傷つけてしまうので、ワイパーを使ってはいけないのだが、そんなこともいってらんないので、ウォッシャー液をガンガン出しながら洗い流す。車は鹿児島に来てから買い替えたが正解だった。桜島仕様になっていて、ウォッシャー液タンクの容量が大きくなっているのだ。
驚いたのはドーンという地響きのような音とともに、窓ガラスがビリビリ震えた時だ。地震か!?とびっくりしたが、原因は桜島。大きめの噴火が起こると、爆発にともなって空気振動が起こるのだ。島から数十キロ離れた家でさえこの有様、島内の家は大丈夫なのだろうか。やはりガラスが割れることもあるらしい。
「赤い火」も、もちろん見たことがある。火山雷までは見られなかったが、それはそれは美しい赤だった。
桜島の赤い火 (月刊 たくさんのふしぎ 2013年 01月号)
- 作者: 宮武健仁
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2012/12/03
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この号が出た時は鹿児島に住んでいたので、もちろんその時に読んだが、身近なものがテーマに取り上げられるのはうれしいものだ。今また読み返して、住んでいたときのことを懐かしく思い出した。灰だけは勘弁だが。
- 作者:宮武 健仁
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