著者、栗田宏一氏の作品を、2回ほど見たことがある。
作品とは?と思われるかもしれないが、各地で採集した土を使って、こういう作品を作っているのだ。
SOIL LIBRARY / JAPAN - YouTube
最初に見たのは、東京都現代美術館の常設展。《ソイル・ライブラリー/JAPAN》という作品だ。本書の表紙も美しい土で彩られているが、こちらも、ガラス瓶に入った土がずらりと並べられていて、優しい色合いのグラデーションが何ともいえず美しい。ガラス瓶ひとつひとつに採集地が記載されていて、学術的なコレクションに見えるところも面白い。子供と、ほらここ前住んでた鹿児島の家近くだよとか、冬に旅行に行ったところだねとか、郷土めぐりみたいな会話も出たりして、知ってる町を見つける楽しさもある。
次に見たのは東京都美術館。現美で見てからすぐだ。「Museum Start あいうえの」のイベントで「キュッパのびじゅつかん」を中心にしたプログラムに参加した時のこと。《SOIL LIBRARY/JAPAN》、《SOIL LIBRARY/TOKAI》が展示されていたのだ。
本書は、各地の土と、作者が採集する様子で構成されている。きれいに整えられた“作品”しか見たことがなかったので、採集の様子は興味深いものだった。土の採取は、泥臭く地道な作業だ。どの写真も、作者の表情はなく、後ろ姿または下を向き、一心に集めている様子が写されている。
どこにでもあるようなふつうの土が、あんなに美しい作品に生まれ変わるなんて本当に不思議なものだ。ふつうといっても、作者の目を通して選ばれた土だから、磨けば光る“原石”のようなものかもしれないが……。
印象に残ったのは、北海道当別町の土。
雪解け水につかって、灰色だった土。
乾かしたら、まっ白に生まれかわった。
身を屈め、水の中に手を差し伸べながら、ていねいに採取する様子に、なぜかわからないが心を打たれた。
- 作者: 栗田宏一
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2011/05/15
- メディア: 単行本
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