こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ムクドリの子育て日記 (たくさんのふしぎ傑作集) (第110号)

先週末は○○公園と●●公園と◎◎公園に行って鳥の写真を撮りたい!という子供の要望に応えて、暑いなか、朝早くから自転車に乗って出かける羽目になった。

最初に着いた公園の池は、水辺の鳥たちの観察スポットになっていて、ウォッチャーの皆さんが思い思いの場所で、すごいカメラやら双眼鏡を設置して、じっと待っているのが見られた。そんなとこに、子供と突入するのもなーとちょっと面倒に思いつつ、注意を与えてからそっと観察スポットに入っていった。まあ皆の公園なんだし、そんなに気を使うこともないじゃないかと思われる向きもあろうが、やはり気づかいするに越したことはないのだ。というのは、物怖じという言葉を知らない息子は、がんがん大人に話しかけに行くので、その際まあ気持ちのよい対応をしてもらえるかどうか、そこにかかっていると思われるからである。案の定、さっそく子供は近くにいたおじさんに、何の鳥を見ているのか、どこにいるのかと尋ね始めた。目当ての鳥が来ていないこともあり、ウォッチャーのおじさんは親切に答えてくださった。「オオヨシキリを待っているんだよ。昨日この時間にうるさく鳴いていたけど、きょうはまだみたいだ」とのこと。

じゃあ子供もここでオオヨシキリを待って観察するのかな?と思いきや、行こ!と言って別の場所に移動し始めた。オオヨシキリゴールデンウィーク谷津干潟に行ってさんざん見たので、もう十分だということらしかった。えー見ないの?と思ったが、仕方なく後から歩いていたところに、早く来て来てー!という興奮した声が聞こえてきた。ほらほら、と指差す先には緑色の中型の鳥がいる。ワカケホンセイインコだった。そんなに珍しいかなあ…と思いつつ、子供が主張するところを聞くと、野生の(正確に言うと野生化した)ワカケホンセイインコを見るのは初めてということで、一度見てみたかったんだーということらしい。

オオヨシキリの方がかわいいし風情があるよな…とかいうようなことは一言もいわず、言っても無駄なので、そこはグッと飲みこみ、へ〜こんなとこにも住み着いているんだねーと無難に返事をしたわけであるが、本当に子供というのは、親が見て欲しい(あるいはやって欲しい)と思っているようなものは、歯牙にもかけないものなのだ。

この記事でも、坂東園長が「そこで大人の価値観を子どもに知らず知らず押し付けることは多いと思います」と言っているが、大人の思惑として、せっかく(労力も時間もかけて)連れて来た動物園なんだから、そこの園の「目玉商品」である珍しい動物を見ない(喜ばない)なんて、何のために連れてきたんだかわからない!となってしまいがちなのは、アドベンチャーワールドジャイアントパンダにも、素晴らしいマリンライブにも大して関心を示さず、ひたすらアトラクションに夢中だった息子を持つ親として、気持ちはわからないでもない。

しかし、興味がないところに、いくらほらほらと促してもどうしようもないわけで「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」ということわざは、いつでも正しいのだ。

 

前置きがかなり長くなってしまったが、本号は、ムクドリというこれまた「珍しくもなんともない鳥」が、家の雨戸の戸袋に巣を作り始めたところに、これを観察してみようと記録につけたものを、絵本として仕立てたものだ。普通の母親であれば、衛生上の問題もあるので、父親にでも頼んで巣を取り除くということをしてもおかしくないのだが、この本は、

 あら、ムクドリ。シロとクロじゃないかしら……。頭の白っぽいのがメスのシロで、黒いのがオスのクロ。去年、この戸ぶくろで巣を作ったつがいが、帰ってきたんだわ。去年はほんと、たいへんだった。子育てのあいだ、雨戸はあけられないし、やかましいし、きたなくなるし。でも、また来てくれて、うれしいな。

「たけし、またムクドリが、この戸ぶくろで巣を作ってもいいでしょ?」

「うん、いいよ。ムクドリは、ぼくの部屋の戸ぶくろが、よっぽど気に入ったんだね。」

 ムクドリさん!今年もどうぞ!

とかいうのんきな会話から始まる。

観察の様子は、素人らしいほのぼのとしたもので、一方、好奇心を持ってこまごま見たものを記録しているさまはとても楽しい。鳥の専門家でないところが、かえって「大人の自由研究」風で面白いのだ。しかし作者は、鳥は素人でも絵はプロなので、素敵な絵本として仕上がっている。

ヒナの声が早朝からにぎやかになり始めた頃、部屋の主であるたけしが「ぼく、やかましくってねてられないよ。おかあさんと部屋をかわって。」と悲鳴を上げることになったり、観察に夢中になりすぎた作者が「おかあさんもがんばってるんだね。」と子供に言われてしまったりと、親子のやり取りが描かれているのも面白い。

たけしが、ムクドリに関心を持ったかどうかは定かではないが、母親が熱心に見ているものだから、きっとちょっとは興味を持ったかもしれない(…が、作者のうっかりで、たけしの部屋に糞をしまくり事件が起こっているのでどうだろうか?)。

それを考えると、もし子供にオオヨシキリを見て欲しかったら、言うべきだったのは「私はオオヨシキリを見たいから、ここにいるね。」だったのかもしれない。私が本当の意味で関心を寄せないところに、子供が食いつくはずがないではないか。でも、子供のことだから、じゃ僕はあっちで違う鳥探してくる!ってさくっと言うだろうなあ。まあそれで良いのだろう。

ムクドリの子育て日記 (たくさんのふしぎ傑作集)

ムクドリの子育て日記 (たくさんのふしぎ傑作集)