こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

あったよ! 野山のごちそう(第291号)

一緒に行こうよ"こくわ"の実 また採ってね

DREAMS COME TRUE「晴れたらいいね」より

野山のごちそう…といえば、動物植物キノコなど、いろいろなものが思い浮かぶが、英題に書かれているのは"Wild Fruits and Nuts"なので、本書は主に野山の木の実類を紹介した絵本となる。

ドリカムの「晴れたらいいね」の中に出てくる"こくわ"は、サルナシの実として本書にも登場している。ウィキペディアには「温暖地では、概ね標高600m以上の山岳地帯に自生する」と書かれているが、とすると「晴れたらいいね」の冒頭、

山へ行こう 次の日曜 昔みたいに

雨が降れば 川底に沈む橋越えて

と歌われている「山」は、割と高めの山(ちなみに高尾山の標高は599m)ということになる。高尾山程度といえ、がっつりな山登りという雰囲気の歌でもないなーと思ったが、吉田美和は北海道出身だから、北海道であればそれほどの高所でなくともサルナシが自生しているかもしれない。でも、「雨が降れば川底に沈む橋」とは沈下橋のことだろうが、これは徳島・高知あたりが有名だしなあ…と思っていろいろ調べているうちに、歌詞の「山」は、出身地池田町にあるフンベ山、「橋」はかつて沈下橋だった川合橋であろうということがわかった。フンベ山の標高は170m、これならば「晴れたらいいね」から連想する"ちょっとしたハイキング"のイメージにぴったりの山だ。

私もコクワこそ採ったことはないが、山に行った時、その辺に生っている実をちょっと摘んだりすることがある。すごくおいしいというわけではないが、口の中にじわっと広がる酸味が、疲れた身体にほどよい味だ。

しかしながら「野山のごちそう」の味わいで実感するのは、実のところ「栽培種のありがたみ」の方なのだ。

最後の方にも書かれているが、

どんなにおいしそうに見えても毒をもっている実もあるよ。

どんな実でも、はじめはよく知っている人に教えてもらって口に入れよう。

ということで、まずは有毒無毒の区別がつかないと、食中毒を起こすことにもなる。つい最近も「名古屋の公園のキノコ食べ男性3人が食中毒」のようなこともあり、山菜の誤食による食中毒事故も、毎年のように報告されている。

コクワ採りにしても、おいしく食べられる状態になった実というのは、当然野山の動物たちも好むわけで、熊との遭遇という危険とも隣り合わせだ。タケノコ狩り、山菜採りも同様で、動物たちが生きる山に入って、食料である、その同じものを採るというのは危険を伴うことなのだ。

しかも野生の木の実というのは、コストパフォーマンスが非常に悪い。硬い殻を割らなくてはならなかったり、その割に可食部が少なかったりする。以前野生の栗を拾って食べてみたことがあるが、案外虫食いが多くて食べられるのはほんの一部だった。ほかにも渋みがあったり、食感が悪かったりすることもあるし、人間が美味しく感じるような食べ頃の実は、本書にもちらほら書かれているが、虫などの先客がたかっていたりする。

狩猟採集生活をしていた頃の人間は、それこそ、

植物も動物も、生きるための知恵くらべだ。 

という、その知恵くらべのまっただ中で暮らしていたのだろう。食べられる木の実を選り分け(有毒無毒の区別)、食べごろを見極め(青梅のように未成熟の状態では有毒の実もある)、加工して食べる工夫(例えばトチノミ)をし、栽培や品種改良を重ね、可食部が多く食味に優れた果実を供給する…という知識・経験・試行錯誤の積み重ねの上に、今、私が享受している豊かな食卓があるのだった。