こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

飛びたかった人たち(たくさんのふしぎ傑作集) (第66号)

鳥は飛べる形 空を飛べる形
僕らは空を飛べない形 ダラダラ歩く形

ダビンチのひらめきと
ライト兄弟の勇気で
僕らは空を飛ばないかわり
月にロケットを飛ばす

↑ THE HIGH-LOWS ↓「バームクーヘン 」アルバム『バームクーヘン』より

 

「空を飛べない形」であるにも関わらず、なぜ人は飛びたがるのだろう?

神話のイーカロス然り、鳥人間コンテスト然り。この人も実は飛びたかったのだろうか?

"Tower Jumpers"と呼ばれた「飛びたかった人たち」の末路は悲惨そのものだ。

本書冒頭で紹介される記録の末尾は、次のような言葉で終わっている。

落ちて首の骨を折った。

落ちて死んだ。

両脚を折った。

片腕を骨折。

重傷を負った。

太腿を骨折した。

ジャンプして死んでいる……

本書には載っていないが、日本にもいた。そしてもちろん、骨折している。

モンゴルフィエ兄弟は賢かったので、熱気球の初飛行にみずから乗り込むことはしなかった。代わりの乗客は羊と雄鶏。その後有人飛行の「実験台」となったのも、ピラートル・ド・ロジェフランソワ・ダルランド侯爵。勇気ある二人の男たちだ。

ジャック・シャルルは、みずから作った水素気球に乗り込んで実験を成功させたが、以後二度と乗ろうとはしなかったという。前述のピラートル・ド・ロジェは、熱気球と、このシャルルが開発したガス気球とを合体させるアイデアを考案し、イギリス海峡横断に挑んだが、危険な試みだというシャルルの警告どおり、悲惨な結末を迎えることとなる。初めて有人飛行に成功したロジェは、これまた航空機史上初めての犠牲者として生涯を終えることとなった。

本書は佐々木マキの本としては珍しく、自らの挿絵ではなく、当時の絵や写真をふんだんに使って作られている。イラストは、合間に挟み込まれているのみ。シュールなテイストが良いアクセントになっている。