ものを知らないというのは、子供の最大の強みだと思う。
なまじいい加減に、理科系教科を勉強した大人としては、素粒子だの重力係数だのいう言葉が出てくるだけで、へなへなへな〜と力が抜けていくような気がするのだが、その点、何の先入観もなしに突入できる子供はすごい。
もともとこの号は読み聞かせではなく、子供が一人で読んだものだ。私自身はささっと読んだだけで図書館に返却してしまっていた。これを書くためにもう一度借りてきたのだが、見つけた子供は、
「あ、これ面白かったんだよー、ほらほら〜」
とすぐさま手に取って熱心に読み始めたのである。
え、これ面白かったのか……すごいな。
もちろん面白くないわけではない。しかし、私は「科学の読み物」として読んだため、自分の理解の追いつかなさに、もやもやした思いを抱いていたのだ。
子供は「わかったかどうか」なんてどうでもいいことなのだろう。単純に「面白い物語」として読んだのだと思う。そのお話が佐々木マキの絵で具現化されているとなれば、これほど面白いものはない。作者だってこう書いているのだから。
佐々木マキさんの絵という望外の喜びが実現して、理系出身の身としてできた時はちょっと得意だった。(あの絵本たちの思い出 池澤夏樹 |こどものとも創刊60周年より ※リンク切れ)
陽子や中性子みたいな言葉も、ただの登場人物と思えば、頭の中にはわくわくするほど壮大な“創世の物語”が広がってゆくのかもしれない。つくづく子供がうらやましい。