『おもしろい楽器 中南米の旅から』は、音楽と楽器と人で満ちあふれている。
たとえば吹く!
たとえば叩く!
たとえばふる!まわす!ゆする!
たとえばひっかく、はじく、こする!
楽器をもたない人も、楽器を鳴らさない人もいないんじゃないかと思うくらいに、みな音楽を楽しんでいる。種類もいろいろなら、形もいろいろ。美しく彩られた楽器と、たくさんの人々。写真の数々を見るだけで、にぎやかな音が聞こえてくるようだ。
中南米にはなぜ、こんなにも楽器があふれているのか?もともといた先住民のところに、スペインやポルトガルなどから白人がやってきて、その白人たちがまた、アフリカからたくさんの黒人を奴隷として連れてきた歴史、が関係しているという。中南米で人びとが往来した歴史は、苦難の歴史でもある。言葉も背景もさまざまな人たちが行き交うなかで、音楽は言葉より多くのものを伝えてきたことだろう。人びとは、楽器というツールをとおして、楽しさばかりでなく、人生の苦しみや悲しみを分かち合ってきたのかもしれない。