夜が好きだ。
就職して一人暮らしをしていた頃、夜を自由に使えるのがうれしくて、都会の夜を過ごすのがうれしくて、あてもなく街をうろついたことがある。都会といっても、そこは学生時代を過ごしたなじみの街。実家暮らしの頃は決して見ることのなかった深夜のすがたは、何だか違うところのよう。戸惑いと面映さが入り交じったような、複雑な気分になったことをよく覚えている。
『夜へ行こう』の、どのページのどの写真もどの文も、夜を愛する者にはその感覚がよくわかる。夜は大人の時間、たまに許される夜更かしは、子供にとって格別な経験だろう。静けさ、暗さ、怖さ、そして美しさ……昼間にはない感覚は、特別なものとして心に残る。
眠っていたいろんな感覚が、夜になると目をさます。
人間の感覚は、夜になれば自然にすごくなる。
夜は不思議な力を与えてくれる時間なのだ。
しかし……夜書く文は、朝読み返せといわれるもの。夜の感覚が昼間の理性に通用することはない。このブログは大概、日中に書くようにしているが『夜へ行こう』は、やはり夜の方がしっくりくる。朝読み返すのが怖い。
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