こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

地蔵さまと私(第394号)

本号の著者、田沼武能氏は、ライフワークとして日本や世界各地の子どもたちの写真を撮り続けている。その原点となるのが、

私がお地蔵さまを意識するようになったのは、本誌冒頭にも書いているが、1945年の東京大空襲の翌朝に防火用水槽の中で焼死していた子どもを見てからである。その姿があまりにもお地蔵さまの姿に似ており、私は地蔵さまは子どもの化身である、と思うようになった。(「作者のことば」より)

という出来事だ。当時田沼氏は16歳。長じて後、写真家となった彼は、子どもと地蔵さまにかかわる各地の行事を探しまわり、カメラに収め続けてきた。本書では、地蔵ころがし、化粧地蔵、地蔵盆などの行事が、お地蔵さまと、お地蔵さまを取り囲むたくさんの子供たちの写真とともに紹介されている。

本書のタイトルは『地蔵さまと私』だ。『地蔵さまと子どもたち』でも、英題の"JIZO:The Guardian Deity of Children"(『地蔵さまー子どもたちの守り神』)でもない。もちろん、この本の主人公は、お地蔵さまであり、子どもたちであり、そして水槽の中で死んでいたあの子であることは間違いない。それではなぜ、著者はタイトルに「私」を入れたのだろう。 それは、この絵本が「私」、つまり田沼氏の"祈り"の本だからであると思う。戦争や紛争に巻き込まれ、被害を受けてきた弱い人たちーそんな子どもや女性、老人たちを世界各地で数多く見てきた田沼氏はこう言う。

防火用水槽の中で命を落とした子どものようなことが起こらぬよう、平和な日本であり続けてほしいと願ってやみません。(「作者のことば」より)

その願いは「私(田沼氏)」だけではなく、他ならぬ私の願いでもある。私の子供が戦争や紛争に巻き込まれるようなことがありませんように。幸せに、笑顔で過ごすことが多くありますように。私の子供が、ということは、私の周りにいる子供たち皆のことでもある。

ほとんどのお地蔵さまは身近な場所に祀られ、素朴なお姿をされている。立派な祠にいらして、高い位置から見下ろされていることはほとんどない。子供やお年寄りといった弱い者たちの目線と等しくいらっしゃり、いつでも見守ってくださっているのだ。

 

付録には「お参り犬すごろく」がついていて、本号を読んでいた夫は、子供を誘ってこの双六で遊び始めた。振り出しが日本橋、上がりは伊勢の伊勢参りの双六だ。戌年ならではの付録だと思うが、お参り犬はかつて実在しており、この"伊勢参りに出かける犬たち"の話は『犬の伊勢参り』に詳しい。こちらも興味深い本だ。