伝言ゲームをしたことがあるだろうか?
子供が幼稚園の頃、出し物で伝言ゲームをしたが、ごくごく簡単な言葉さえ、正確には伝わらないことに驚いた。幼稚園児の言語能力のせいもあるだろうし、面白くするため、途中わざと改変する大人もいたかもしれない。
「ただの言葉」だけでも、正確には伝えられないものなのだ。
伝わらなかったのはわざと変えた(かもしれない)人がいたからじゃん、て思われるかもしれないが、その「わざと変える」ことこそが「人間の業」なのだと思う。
マスメディアの世界では、ときどき「やらせ」問題が浮上するが、「演出」の範囲なのかということがいつも俎上に載せられる。明らかにマズいと思われるものから、誰もがフェイクだとわかって楽しむものまでさまざまなレベルがあるが、どこまでがやらせで演出なのかという線引きをするのはとても難しい。
『ほらふきおじさんのホントの話』も「ホントの話」を面白く演出する仕掛けでできている。作者は“テレビ屋のおじさん”だ。
“聴耳頭巾”に動くサボテン、忍者の水わたり、リリパット王国が存在する話から「マンモスを見た」話まで。いずれも“本当の話”を元にしたものである。
作者はいう。
私は仕事の仲間たちと、そんな自然にある不思議なこと、想像もつかない巧妙なしくみを、できるだけ大勢の人にわかりやすく、おもしろく伝えようと、取材をつづけてきました。
つねに好奇心を忘れないことがたいせつです。ときには“ほらふき”とよばれようと。
何かを伝えたいという思いは、聞いてもらいたいという気持ちが先んじるあまり、時に「話を盛る」ことにつながることがある。しかし、人の好奇心を引き出すための“小さな仕掛け”が、 さまざまなエンターテインメントを作り出してきたことも確かだ。
付録の「ふしぎ新聞」の「作者のことば」の欄には、作者の松林明氏と作画を担当した長新太の写真が載っている。まるできょうだいかと思うほど、そっくりな顔なのに驚いた。性質が似ている?人たちは顔つきもそっくりになるのだろうか。