こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ゆきがうまれる(第383号)

冬になると、学校での読み聞かせ(高学年)で『雪の写真家ベントレー』という絵本を読むことがある。

Wilson Alwyn Bentleyという、アメリカに実在した男を描いたものだ。雪の結晶に魅せられた彼は、両親が購入してくれた顕微鏡付きカメラで、生涯にわたって雪の結晶の写真を撮り続けることになる。

ベントレーが撮りためた写真は、専門家などの尽力で『Snow Crystals』という写真集として結実することになった。

読み聞かせでは、写真集の実物も子供たちに紹介している。今の技術で撮られたものと比べると、さほどきれいとは思えないかもしれない。しかし、ひたすら雪の結晶写真で埋め尽くされ、それぞれに違った美しさの文様が並ぶ様はまさに圧巻である。ベントレーの熱意がびしびし伝わってくる素晴らしい写真集だ。

雪といえば、忘れてはならないのが中谷宇吉郎。“雪は天から送られた手紙である”という言葉を残した、雪の研究の第一人者だ。中谷が研究を始めたきっかけというのが、なんとこのベントレーの写真集なのだ。

中谷宇吉郎の森羅万象帖』に載る中谷の言葉によると、ベントレーは美しく見せるために、雪の結晶を加工したのではないか、と。雪は自然現象なので、結晶がくずれたものや、いびつに歪んでいるものも当然ある。中谷は、そのような結晶も自然そのものであると考えていた。この本にも中谷が撮った「美しくない」結晶写真が載っている。

しかし、雪なんて珍しくも何ともないと周囲に腐されても、多くの人に雪の素晴らしさを知ってもらいたい、美しさを伝えたいと写真を撮り続けたベントレーの思いが、中谷を雪の研究へと導いたことは確かなのだ。

 

『ゆきがうまれる』には「雪の結晶写真」はひとつも載っていない。こちらでは水の分子を擬人化した絵などを使い、雪がどうやって作られるかに焦点をあて、順を追ってていねいに説明が進められてゆく。雪はなぜ“天からの手紙”なのか?ということも、これを読むとよくわかる。

そして、そこから一歩先へ進み「雪の結晶の基本となる最初の雪のあかちゃんは、雲のなかでどのように誕生するのか」という「雪の結晶の六角の謎のもっとも根源にあるテーマに挑戦」するのだ(本号「作者のことば」より)

 

たくさんのふしぎ」では、その分野の最前線にいる人たちが、さまざまなふしぎ、さまざまな謎があることを、子どもたちに投げかけてくれる。「ふしぎ」を通して謎を受け取った子どもたちが、大人になってそれを解き、またその子どもたちに謎を手渡す。そんな日がいずれ来るのかもしれない。空気中の小さな小さなチリ一粒が、美しい雪の結晶として結実し、その結晶のチリがまた、新たな雪の結晶をうみだすように。

ゆきがうまれる (月刊たくさんのふしぎ2017年2月号)

ゆきがうまれる (月刊たくさんのふしぎ2017年2月号)