こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して(第330号)

その昔「ナショナル・ジオグラフィック」という雑誌を取っていたことがある。その中でひときわ印象に残る記事があった。

北の森から 90日の撮影記録」という特集記事。ジム・ブランデンバーという写真家が書いたものだった。

人里離れたミネソタ州の森の中。私はここで秋分から冬至にかけての90日間、1日に1回だけシャッターを切ることにした。困難に耐え、神経を集中させれば自然界を再び新鮮な目で観察できるようになると考えたからだ。

1日1枚。一枚一枚、真剣勝負だ。デジタルカメラが普及し、気楽に撮り直しできるようになった今、こういう試みがなされることがあるだろうか?

なかには、何てことはない風景もあるが、なぜだかとても美しく感じられたのだ。

記事の片隅には、これらをまとめた写真集が出版されると書かれている。絶対買おうと思った。出版されるや否や、紀伊國屋の洋書売場に買いに走った。タイトルは『Chased by the Light: A 90-Day Journey』。何度も引越して手放した本は数多あれど、この写真集はいつも一緒に持ち歩いている。

 

ノースウッズについて調べていたときのこと。ナショジオのサイトで、この号の著者、大竹英洋の「ノースウッズの森へ」という連載を見つけたのだ。そこでジム・ブランデンバーグの名前を見た途端、ノースウッズシリーズに魅かれ続ける理由がわかったのだ。ノースウッズはつまり、ジムの“北の森”だった。ジムの写真に魅かれた私が、同じく彼の写真に魅かれてノースウッズを撮るようになった、大竹の本に魅かれるのは当然だった。

 

 『森のおく 湖のほとり  ノースウッズを旅して』の「作者のことば」では、

ノーズウッズに行ったことのない人に、その魅力をどうしたら伝えられるのか。そんな思いから、この本を作りました。

と書かれている。見開きをいっぱいに使った写真の数々は、自然の美しさを目一杯堪能することができる。まさに、ノースウッズの魅力を伝えてくれる1冊だ。

私がノースウッズを訪れることは、おそらくない。それでも、著者の目を通したノースウッズの美しさを、これからも味わい続けるだろうと思っている。

Chased by the Light: A 90-Day Journey

Chased by the Light: A 90-Day Journey