こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

海鳥の島(第72号)

鹿児島住みの頃、ご主人が公立学校の教師という友人・知人がちらほらいた。一様に気にしていたのが「いつ離島ノルマをやるか?」ということだった。子供たちが大きくなってしまうと一緒に動きづらくなる。末子が小学校を卒業するまでに離島勤務を終えたいということなのだ。友人の一人は、○○さんとこは去年大島(奄美)行ったし、うちも来年あたり来て欲しいのよと憂い顔でつぶやいていた。子供の重要なライフイベント(とくに受験)に重なることを考えると、単身赴任という選択もあるとはいえ悩ましいところだ。

学校はともかく、企業の転勤は「会社への忠誠心を試されている」みたいな物言いをされることがある。

このへんな労働慣行(既婚で住宅ローンを背負った社員を地方の工場に転勤させる)は、まだ日本にあるのです。たぶん - 斗比主閲子の姑日記

夫の業種の場合、忠誠心というよりは、表向き「馴れ合い(癒着)を防ぐ」「社内活性化のため」というお題目だ。ご主人が「真の意味で忠誠心が必要な職業」に就く知人は、帯同不可の離島勤務の辞令が出て、泣く泣く単身赴任で送り出したりしていた。勤務地はかなり遠く離れた島で年に数回会えるかどうか。お子さんも小さいのに大変だなあと思った覚えがある。

 

この本の作者、寺沢孝毅氏は自ら「希望して島にある小学校に教師として赴任した」人。「1992年、天売島での10年間の教員生活の後に退職。そのまま天売島に住み着く」ということなので、この本が出た1年後には、海鳥保護や写真家としての活動を始めたことになる。

PROFILE | TERRA images 寺沢孝毅 Official site

ヤマネはねぼすけ? (たくさんのふしぎ傑作集)(第90号)』の湊秋作氏もそうだが、子供たちが暮らす、その土地を愛する人が教師であるというのは幸せなことだ。

天売小学校の校歌(校 歌 | teuri-jhs)には、

“オロロンの 声すみとおり”

という一節があるが、「オロロン」すなわちウミガラスは「2010年には天売島で19羽が飛来し数つがいが繁殖するのみであった」という状況だった。

1991年、本号出版の時点でもはや、オロロンチョウ(ウミガラス)の減少について語る、島の老人の話が出てくるのだ。

ウミネコオオセグロカモメのほうは、もともとこんなにいなかった。人間がすてたざんぱんや魚が、やつらのいいえさになるんだもの。いくらでも増えるせよう。カラスだっておんなじよ。カラスやオオセグロカモメが、オロロンチョウの卵やひなを食いあらすから、オロロンチョウはへるいっぽうよ。

人口減少社会をむかえた日本では、このまま行けば(移民の受け入れなどしなければ)人間の営み自体減っていくことになる。人口すなわち人手が減るということは、作者のような方々が行っている動植物の保護活動が立ち行かなくなる恐れもある。逆に人間の営みが減れば、環境も変わり減ってしまった動植物も回復するかも……とぼんやり考えてみたが、そう単純な話ではないのかもしれない。