ホントにどうして、でしょうねえ……おいしいから、かな?
私は酒飲みの端くれで、若いときは失敗も数多くあった。恥ずかしくて思い出したくもないことだ。晩ご飯の買い物する時、その日飲みたい酒に合うおかずから考える始末。お察しである。
生活を一変させたのは、妊娠だった。
妊娠がわかってから不安だったのは、飲まないでいられるかということ。しかしながら、不思議なことに、飲みたいという気持ちが無くなったのだ。妊娠にともなう生理現象なのか、子を守りたいという気持ちの現れなのかはわからないが、とにかくぴたりと止めることができたのだ。
お酒を止めることはできても、酒ありきのメニュー作りをしていた頭を変えるのは大変だった。夫は飲めない飲まない人なので、酒のつまみのようなおかずがなくなって歓迎のようだったが。
その後授乳を止めるまで、飲まずに過ごしてきたわけだが、しばらくすると、むくむくと飲みたい気持ちがわいてきて、晩酌程度にたしなむことが復活した。その時住んでたのは鹿児島だったので、当然焼酎だ。鳥刺にさつま揚げ、鰹のたたき、ピーナツ豆腐に落花生の塩ゆで……つまみに合うものがたくさんあるんだから、飲まずにはいられない。
授乳が終ったとはいえ、お世話が必要な幼児がいることには変わらない。アルコールが入った状態で育児(仕事)するわけにもいかないので、寝かしつけて、夫と一緒にご飯を食べる時、ちょこっと飲むくらい、昔のような飲み方はしなくなった。子が小学生になった今は、晩ご飯の時、ビールひと缶程度飲む。ワインなど腰をすえて飲むこともあるが、子供が寝てからのお楽しみだ。
関東に戻ってからも、ときどき芋焼酎を飲むが、何となくしっくり来ない。芋には甘めのつまみが合うが、味付けを変えてみても、違和感がぬぐえないのだ。土地のお酒はその地で飲めといわれるが、その通りだと思う。
……というように、酒の話を始めたら止まらないので、いい加減本号の話に入る。
本書は、小学生100人に聞いた「大人のすることでふしぎなことは?」という質問で、「第1位は、どうして大人はお酒を飲むの? でした」ということから、できた本だ。
「お酒ってなに?」という話から始まって、最後は「お酒はなくてもいいものか?」という話で終わる。そこには、
「そういえば、子どもたち、ゲームとかはじめると、時間もなにもわすれちゃうでしょ。あれって、お酒飲まないでも、心がどっか、いっちゃうようなものじゃないかなあ。子どもはお酒なんかなくても、大人がお酒飲んでいるのと同じようなものかもしれないな。だから、子どもにお酒はいらないんだよ」
という会話が出てくる。確かに何かに夢中になっている時は、お酒はいらないというか、飲みたいとは思わないだろう。
オトナになっちまえば 泣きそうな夜なんて
寂しいキモチなんて なくなると思ってた
ニガい酒をあおる ワケも知らなかった
ー怒髪天「大人になっちまえば」アルバム『ニッポニア・ニッポン』より
いつまでもお酒の“苦み”を覚えることなく、何かに夢中になる楽しみを味わい続けることこそ、理想の生き方なのかもしれない。