こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

虫こぶはひみつのかくれが?(たくさんのふしぎ傑作集)(第86号)

虫こぶとは昆虫の寄生によって、植物の組織がこぶ状に変化したもの。

昆虫以外にもダニや菌類によって作られるのもある。

本書はシロダモタマバエの虫こぶについて、1989〜1990年にかけ行われた調査を中心に書かれたものだ。

虫こぶは一見安全で住み心地が良さそうに思える。だが本当に良いことずくめなのか?もしそうなら虫こぶで生活する昆虫が増え、そこらじゅう虫こぶだらけになるはずでは?そんな疑問から始まる本だ。

調査地は、家の近所にあるシロダモの木52本。うち35本を調査対象に定め、残り17本は採集用として、虫こぶのなかの幼虫などを調べるために使う。

1989年4月の最初の調査では、虫こぶが見つかった木は14本、虫こぶができた葉は2850枚中349枚。

2850枚の新葉をぜんぶ調べて、虫こぶの数を数えた。合計2792個。1齢幼虫が2792匹いるのだ!

とさらっと書かれているが、葉っぱを数えるのも、虫こぶを数えるのも、さぞや大変な作業だったことだろう。

5月の調査では、シロダマタマバエの大敵であるヒメリンゴカミキリが登場。ヒメリンゴカミキリはシロダモの若い枝に卵を産みつける。幼虫は枝から葉っぱへ食い進んでゆくため、枝は折れ葉が枯れてしまうのだ。枯れた葉の虫こぶは維持できないので、タマバエ幼虫も死んでしまうことになる。2792個の虫こぶのうち1093個が枯れ、残り1699個

何らかの原因で幼虫が死んで虫こぶが生長しなくなったり、台風で虫こぶつきの葉っぱが落ちてしまったり。9月の調査では473個まで減ってしまう。シロダマタマバエコマユバチが寄生するための虫こぶを探しにきたり、コガネコバチに寄生されているのが発見されたり。寄生バチに襲われる様子も見られている。

翌年5月、冬越しした虫こぶ473個を調べると、タマバエ79匹、コマユバチ245匹、コガネコバチ124匹が羽化。なんと4分の3もの数が寄生されていたことがわかるのだ。

「シロダマタマバエの死んだ数と生きのこった数」について、時間の推移の棒グラフが載っているが、調査開始時の虫こぶの数に対し、無事「大人になった」のはわずか0.9%。自然に暮らす生き物が「大人になる」というのが、いかに大変ことなのかがよくわかる。もっとも人間は、別の意味で「大人になる」のが大変な生き物ではあるが……。