3ヶ月分のパンを、皆で一斉に手作りするトルコの村*1。食事の順番こそ男性優先だが、二人で協力して夕食作りをするスリランカの夫婦。親類や近所の女の子たちに囲まれて、料理を教えながらごはん作りをするインドのおばあちゃん。家族総出で市場に出す、ソム・パーやソム・ムー作りをするラオスの一家。寒さの厳しい冬に、慣習に則ってみそやしょうゆ作りをする韓国の家族。地域の人々が協力し、棚田での米作りに励むフィリピンの村。昼食は涼しい高床の下、稲刈りの協力のお礼に皆にふるまわれる。
本書の最後は、
どこの国、どこの町、どこの村でも、いちばん人けのある場所は台所でした。そこには、食事をつくる人がいて、火のぬくもりがある。それが、人をひきつけるのでしょう。そして、台所はたしかに人と人をつなぐ場でした。
と結ばれているが、”同じ釜の飯を食う”ということわざがあり、英語の company(会社)の語源は「ともにパンを食べる仲間」であるように、食事を共にする、そしてご飯をいっしょに作るというのは、つながりを深めるのに一役買っていることがわかる。NHKのサラメシでも、一人飯よりは皆で一緒に作ったり食べたりするご飯の方が印象深い。
食事というのはただ腹を満たし、栄養を摂るだけのものではなく、人と人との交流の大切なツールなのだ。のんびり食べる子供に、ついつい早くと急かしてしまいがちだが、そののんびりは、私とご飯をゆっくり楽しみたいというサインの表れなのかもしれない。 夕方、きょうのご飯なにー?と台所にくる子供と一緒に過ごす幸せを、もっともっと噛みしめるべきなのかもしれない。
*1:クルシェヒル県カマン郡チャウルカン村。調べてみると、日本はここの「カマン・カレホユック遺跡発掘調査」に協力しているらしく、現地には日本庭園「三笠宮記念庭園」も作られている。