こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

セミのおきみやげ (たくさんのふしぎ傑作集) (第29号)

バッタのオリンピック (たくさんのふしぎ傑作集)(第6号)』と同著者による本。

セミの種類、分布場所、身体の図解、「絵とき検索」による同定の仕方まで、詳しくていねいに描かれている。もちろんメインの“セミのおきみやげ”=ぬけがらについても、ぬけがらの図解、ぬけがらの「絵とき検索」まであって、かなり充実した内容になっている。

「絵とき検索」は、子供にもそして昆虫に詳しくない私のような大人にも、きわめてわかりやすい。今の時期、地上に現れ出したその辺のセミをつかまえて同定してみたくなる。

 

初っ端に登場するのがクマゼミクマゼミといえば「香川照之の昆虫すごいぜ! 」で、カマキリ先生が愛にあふれるメッセージを寄せていたのが印象的だった。

第1回 クマゼミとの衝撃的な出会い | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

クマゼミは「西日本ではごくふつうですが、関東地方になると、すんでいる場所が限られてきます」というセミだ。

本書の最後には、

関東地方やその東でクマゼミのぬけがらを見つけた人は、ぜひ教えてほしい。クマゼミが東へすみかをひろげているようなのだ。どこまで行っているのかな?

と書かれているので、本号発行当時から、クマゼミの分布が少しずつ東へ広がりつつあったことがわかる。

 

都会にすみついたセミたち』によると、福岡の天神ではクマゼミが多く見られるという。宮崎の山から買う街路樹経由で運ばれてくるようだ。クマゼミは、切り開かれて明るく、地面が乾燥した場所を好む。都市部は住みやすい環境なのだ。地面がアスファルトでかためられているので、幼虫の天敵モグラが少ないことも好条件。クマゼミの“東上”は、温暖化だけでなく、都会にうまく適応できる性質とあいまって、ますます進んでいくのかもしれない。

 

『バッタのオリンピック』にあった日浦勇氏の名前は、本書にはない。

「作者のことば」には、こう書かれている。

今は亡き日浦勇さんは、大阪にある高槻公害問題研究会の自然観察会で、セミのぬけがらを使ってセミについて調査することを思いつきました。ぬけがらなら、だれにでもかんたんにとれるし、いくらとっても自然をそこなうことがない、そしていろいろなことを語ってくれるからです。

この本には、セミのぬけがらに託す日浦さんや私の、そして研究会の人たちの思いがこめられています。