『ゆきがうまれる(第383号)』に先駆けて描かれた、同じコンビによる「氷」の本。
この号も雑誌と傑作集の表紙が異なっている。傑作集の方がインパクトはあるけれど、青系でシンプルにまとめられた雑誌の方が、私は好きだ。透かした氷の中に、ペンギンらしきものが秘かに見えるのも楽しい。
本書は、水の分子というミクロの話から始まる。そして、透明な氷はどうやって作るのか、そして色付きの氷はなぜできないのか、という話に続いてゆく。色付きの氷を作らせない頑固な性質のおかげで「深い海をめぐる大きな海流のはじめの一歩」がつくられ、「海流によって地球全体がほどよい気候にたもたれている」というマクロな視点へと流れる話は、ダイナミックな展開でとても面白い。
斉藤俊行氏の絵も素晴らしい。お話のミクロからマクロへと変わる展開を引き立てるように、効果的に見開きを使っている。絵に登場する、子どもたちの表情もすごくいい。輪郭線もなく、単純な色の重なりだけで、さまざまに描き分けられている。
氷の透明感、ガラスの透明感も見事。傑作集の表紙のかき氷の繊細さも捨てがたいが、それでもやはり月刊誌の方が好きだ。グラスと氷の透明感をシンプルな色づかいで描き分けている。
明日から夏休みの家族旅行。湖、山、川……と水の自然を楽しむ旅になりそうだ。美しい水の風景を見ながら、地球上で水がめぐりめぐっている一端に「氷」が関わっていることに、思いを馳せてみたいと思う。
- 作者: 前野紀一,斉藤俊行
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2012/06/10
- メディア: ハードカバー
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