こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

ものまね名人 ツノゼミ (たくさんのふしぎ傑作集) (第238号)

本書の著者である森島氏も『バシリスク 水の上を走るトカゲ』の嶋田氏と同じく、偶然出会って一目で恋に落ちたものを追っかけ始めたクチだ。仕事でボリビアに行くことになった森島氏は、前々からの憧れであったヘルクレスカブトムシモルフォチョウを見ることを楽しみにしていたが、自分の住むところがスクレという街で、地形や気候的に「ヘルクレスやモルフォがいるわけはない」と思われる場所だと知りがっかりする。しかし、ボリビアに来たある日、モンテアグードというところに出張に行くことになった森島氏は、途中パディジャの町を通り過ぎたところで森林地帯を発見する。休憩もそこそこに、憧れの「南米の森」でカメラ片手に虫探しを始めることになった彼が最初に出会ったのは、ヘルクレスでもモルフォでもない、一匹のツノゼミ。それをひと目で気に入ってしまった森島氏は、モンテアグードでもツノゼミ探しに熱中することとなる。

ところでツノゼミの中には、アリと共生関係にある種類もいて『お姫さまのアリの巣たんけん』で紹介した『アリの巣のお客さん』によると、これらのツノゼミの幼虫はアブラムシやカイガラムシなどのように、植物の汁を餌にしては余分な糖分を排出する生態を持っているが、この“甘いおしっこ”を目当てとするアリに守られて生活している。本書でも「アリと暮らすツノゼミ」ということで一章割かれており、ミナミセダカツノゼミというツノゼミの群れをためしにつついてみたら、アリは激しく走り回って手に噛み付き、攻撃をしかけてきたという話が書かれている。

ミナミセダカツノゼミ…と固有名詞を本書に出てくるままさらっと書いたが、実のところ、 

 ところが、それらツノゼミのほとんどが、日本名をもっていなかった。だから、ぼくは新しいツノゼミに出会うたびに、そのすがた形を見ては、かってに名前をつけた。この本で紹介したツノゼミたちの日本名は、ほとんどぼくがつけたものだ。でももっといい名前があるかも知れない。あなただったら、どんな名前をつけただろう。

ということで、本書のツノゼミに充てられた日本名の多くは、著者の手によるものだというのだ!“ミナミセダカツノゼミ”の名付け親が森島氏かどうかはわからないが、学名は(エンティリア)とカッコ書きで併記されているので、たぶんEntylia carinataのことかなあと思われる。ちなみにこのEntylia carinata、ツノゼミ ありえない虫』では“エグレツノゼミ”という日本名が充てられている。

本文は、上記の文に続けて、それぞれ違う種類の6匹のツノゼミの写真とともに、

ここに紹介するツノゼミたちは、まだぼくも日本名をつけていない。だから、ぜひ、このふしぎな形をしたツノゼミたちにぴったりの、すてきな名前をあなたが考えて、つけてあげてほしい。

と書かれている。こういうところが、子供のための本である「たくさんのふしぎ」らしくていいなあとしみじみ思う。世界には日本で知られていない、日本名もついていない生き物がたくさんいること、それに自分で名前をつけてもいいんだ(それが“正式”な名前になるかどうかは別として)と知ることは、まったくわくわくする話ではないか。

大人の私だって、自分だったらこういう名前をつける!という創造性を発揮すればいいのだが、丸山先生の本ではなんて名前になっているかな?とかいう他力本願で小市民的な発想しかないのが残念なところだ。まったく詰まらないことではあるが、たぶんこれかな?と思うものを調べてみた。カッコ書きが『ものまね名人 ツノゼミ』で表記されているカタカナ学名、斜字体がこれかな?と私が推測した学名、⇒の後がその学名に対し『ツノゼミ ありえない虫』の中で充てられている日本名である。

(ケレサ)Ceresa taurinaカメンツノゼミ

(メンブラキス)Membracis foliatafasciata ⇒ マルエボシツノゼミ

(リコデレス)→ Lycoderes fuscus トッテツキツノゼミ

(スポンゴフォールス)→ Cladonota (Sphongophorus)

Cladonota hoffmanni マツツノゼミ?あるいは

Cladonota guimaraesi カザンツノゼミ?あるいは

Cladonota gracilis トウロウツノゼミ

(スティクトケファラ)→ Stictocephala bisonia 

⇒ だと思うが『ツノゼミ』には見当たらず。

(キフォニア)→ Cyphonia sp.キスジスキサジツノゼミ

一方向だけの写真で同定するのはなかなか難しく、時間だけを無駄にした調べものになってしまった。これほどまでに広いツノゼミの世界、研究者の方も同定や新種の記載に苦労しているのではないだろうか?しかし、昆虫の場合、捕獲して後から調べるということもできるから、新発見のチャンスはけっこう転がっているのかもしれない。

ものまね名人 ツノゼミ (たくさんのふしぎ傑作集)

ものまね名人 ツノゼミ (たくさんのふしぎ傑作集)

ツノゼミ ありえない虫

ツノゼミ ありえない虫