こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

メコン 源流をもとめて(第284号)

私は川の絵本が好きらしい。

加古里子の名作『かわ』に始まり、村松昭の「鳥瞰地図絵本」シリーズは全部読んでやっている。たまがわちくごがわちくまがわ・しなのがわよしのがわいしかりがわよどがわあらかわ・すみだがわ。子供も読み返したりしている。

その昔、多摩川をさかのぼってみようという夫の誘いにのり『多摩川散策絵図―源流から河口まで』片手に川沿いを歩いてみたこともあるが、結局中流域までもいかない範囲で終わってしまった。

多摩川の源流「水干」にも行ったことがある。笠取山に登った覚えがあるので、行ったのだろう。広々とした河川敷をもち、あちこちに大きな橋がかかる多摩川の流れも、最初の一滴から始まるのだ。

多摩川といって思い浮かぶのは、中・下流域の風景だ。メコン川といわれて思い浮かぶのは、茶色く濁った大きな流れ。人々の生活に欠かせない場であり、その恵みを受け取る場であり、憩いの場でもある。本号にも写真があるが、ラオスヴィエンチャンを訪れたときに見た、メコンに沈む夕陽は今でも忘れられない風景だ。

メコンも川であるからにして、多摩川と同じく「源流」がある。しかしメコン川の源流など、想像もつかない。多摩川は山梨、東京、神奈川と複数の自治体を流れているけれども、メコン川のスケールは都道府県レベルではない。東南アジア最長を誇るこの川は、ベトナムカンボジア、タイ、ラオスミャンマー、そして中国という6つの国にまたがって流れているのだ。

川の出口、ベトナム南部にある河口は海と見紛うばかり。

 さらに河口に近づくと、濁っていた川の色がだんだんにきれいになり、海の色に変わっていきます。まわりも広々とし、陸が遠くに見えるようになりました。もう海に出たのかと聞くと、「いいや、まだ川だ」と船頭は言います。あと2〜3キロメートル先からが海だと言うのです。

 さらに進んだあるとき、船頭が「海だ」と言いました。でも、ぼくには、どこまでが川で、どこからが海なのか、わかりませんでした。

上流部は中国にある。瀾滄江と呼ばれている。河口から2000キロもさかのぼると、茶色く濁っていた水も、多摩川くらいには青みを帯びてくる。メコンに注ぐ湖、洱海では鵜飼も行われている。日本はウミウを使うが、中国ではカワウを使っている

源流部は、チベット自治区チベット語では「扎曲」と呼ばれている。源流を目指しさかのぼってゆくと標高は4000メートルを超える。富士山よりもはるかに高い4800メートルまで到達するのだ。以前ラダックを旅したとき、飛行機で、標高約3500メートルのレーまで一気に上がったことがあるが、ちょっとした高山病に罹りきつい思いをした。著者は徐々にメコンを遡ってきたから、高地への順応はスムーズだったかもしれない。

いよいよの源流「最初の一滴」探しは、難航を極める。

案内してくれた現地の遊牧民によると、

源流は雪が多い年とか少ない年、また、夏と冬でも若干変わるというのです。

若干というのはこの大自然の中でどの範囲に及ぶものなのか。「ここまで来て源流を探し出せなかったら……」という作者の不安も宜なるかなという感じ、こちらまでドキドキしてしまった。