こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

青い海をかけるカヌー マダガスカルのヴェズのくらし(第408号)

見開きいっぱいに広がるエメラルドグリーンの海。生き生きとカヌーを操る人々。温かみのある手書きの題字。表紙を見るだけでわくわくしてくる本だ。表紙が、この『青い海をかけるカヌー マダガスカルのヴェズのくらし』のすべてを表しているといっても過言ではない。

彼らの暮らしはシンプルだ。男は朝、ごはんを食べたら漁に出る。女性はとれた魚を売りに出かける。漁からもどればお昼ごはんだ。漁に出られないときは家族や仲間とのんびり過ごす。子供たちはカヌー競争に興じたり、カヌーの板を使って波乗りしたり。学校をサボって海に遊びにきてしまう小学生もいるらしい。

シンプルな暮らしのなかには、一朝一夕では身に付かない技術が隠されている。彼らの生活には技術が欠かせない。カヌーの操縦技術だけでなく、風向きや強さ、海の状況を判断しながらの航海術、漁場選びや漁の技術も必要なのだ。カヌーはひとつひとつ船大工による手作り、不具合があれば修理も要る。漁の道具だって木を加工し手作りすることもある。

学校をサボって、と書いたけれど、子供たちは海で遊びながら、親と漁に出かけながら、こうした技術を身につけていくのだ。彼らの生活を考えれば「学校でのまなび」より、こうした「生きるための技術」の方が必要不可欠かもしれない。

 

いや、こんなお堅い調子で紹介するような本ではないのだ、この本は。のんびり寝っ転がって、現地の様子に思いを馳せ、空気や光、においまで想像しながら、ゆっくり楽しむものだ。人とカヌーが一体となって海に繰り出すさまは、いつまで見ても飽きない。挿絵が本を柔らかく彩り、温かみのある雰囲気を出している。

「作者のことば」を見ると、堀内氏と牧野氏は古い友人同士ということ。二度ほどマダガスカルを旅したこともあるらしい。だからというわけでもないだろうが、写真と挿絵がぴったり調和してお互いを引き立て合っている。本当に気持ちがよい。マダガスカルに行ってみたくなった。