こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

チョウのすきな葉っぱの味(第384号)

チョウの幼虫はめちゃくちゃ偏食だ。

タイトルは「すき」になっているが、そんなレベルではなく、特定の葉っぱしか食べないのだ。「食草」もしくは「食樹」という。たとえ食べ尽くして飢えたとしても、決して他の植物には手を出さない。挙げ句の果て死んでしまうこともあるのだ。

成虫が卵を産みつけるのはもちろん、食草である植物。数多ある緑からどうやって食草を見つけるのだろうか。多くのチョウは前脚で感じた味で確かめているという。アゲハチョウの食草はサンショウだが、サンショウにはアゲハに産卵を促す特別な味の成分が含まれている。アゲハはそれを前脚の感覚毛で確かめているのだ。

Research ─ 研究を通して ─:チョウの味覚から種分化を探る

成虫になってしまえば、花の蜜始めさまざまなものを食べる。食草はたとえるなら母乳のようなものかもしれない。人間の赤ん坊とて母乳(あるいは人工乳)しか飲まないけれど、別に偏食とはいわないのだから。

食草の多くは、強いにおいがあったり(サンショウやセリ)、強い酸を含んでいたり(カタバミやスイバ)、カラシ油というからい成分を含んでいたり(アブラナ科の植物)する。ウマノスズクサのように毒をもつのもある。ほかの虫たちが食べたがらなかったり、牧場の家畜たちに敬遠されたりする植物なのだ。

毒草のウマノスズクサを食べるジャコウアゲハは、成虫になってもなお、その身に毒を含み、襲った鳥は不味さのあまり、二度と手を出さなくなるそうだ。あのやくざなヒヨドリが困惑気味に吐き出している絵が何とも面白かった。

強い臭いをもつといえば、大好きなパクチーもそのひとつだ。チョウの幼虫に食べられたりしているのだろうか。ちょっと検索してみると、セリ科の植物なので、やはり卵を産みつけられ食害に見舞われたりするようだ。

こう考えると、チョウの(幼虫)の競争相手は、人間だったりするのかもしれない。もっとも山椒や芹、香草はそう食べるものでもないから、競合というほどでもないか?。エゾシロチョウのように大量発生するとなると、駆除という話にもなってくるだろうが。

消えたエゾシロチョウ(第264号)』では、チョウと植物の生き残りをかけたドラマを見ることができた。この『チョウのすきな葉っぱの味』でも、同じく、植物と虫の緊張感ある関係を読み解くことができる。

これからちょうど季節。子供に付き合う野鳥観察ついでに、チョウと植物にも目を向けてみようかな(鳥だけで手一杯か?)。

チョウの好きな葉っぱの味 (月刊たくさんのふしぎ2017年3月号)

チョウの好きな葉っぱの味 (月刊たくさんのふしぎ2017年3月号)