こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

地球の中に、潜っていくと…(第417号)

今住んでいるマンションには、地震の爪痕があちらこちらに残されている。

内陸のこのあたりは津波こそなかったものの、震度6が観測され、かなりの建物被害があったようだ。引っ越して1ヶ月くらい経ったころ、さっそく少し大きめの地震があって、災害時の備えについて警鐘を鳴らされることとなった。

ちょっと車を走らせれば、すぐそこに震災の傷跡が見えてくる。跡ではなく、傷そのものだ。何の気なしにドライブに出かければ、大川小学校の震災遺構に行き当たる。報道などでは何度も見た現場だが、実際その場に立つと言葉を失うくらいの衝撃がある。

大きな災害をもたらす地震は、昔も今も、多くの人々から大切なものを奪ってきた。

しかし一方で地震は、「作者のことば」によると、地球の内部を知る、「地球の中に潜る」ための、いちばん大切な情報源になるのだという。エコーやレントゲンで身体の内部がわかるように、地震波の記録を元にすれば地球の中の様子を知ることができるというのだ。

地球内部のことを知る手がかりは、地震波だけではない。著者が携わる超高圧実験も重要な情報源となる。地球の中心は、高い気圧と高い温度の世界でできている。超高圧・高温実験を通して、地球の中がどんな物質でできており、どのような変化や動きをしているのか探っているのだという。

本書はこのような情報源から得られた最新の研究結果をもとに、地球内部の様子がどのようになっているのかを明らかにしている。とはいえ「たくさんのふしぎ」らしく、かたい調子ではなく、研究者のおじいちゃんが孫二人を連れて探検旅行に出かけるという、漫画のようなタッチで作られている。地球内部を目で見ることはできない以上、ファンタジーの世界を借りるのはもっともなことかもしれない。ファンタジーとは言っても、探検に使われている研究船ダイヤモンド号は、著者が実際に実験で作った世界で一番硬い合成ダイヤモンドをモチーフにしていたりで、内容は本格的だ。地球のなかってどうなってるの?とは、多くの子供たちが持つ疑問だと思うが、これを読めば地球内部の様子ばかりでなく、不動に思える大地も脈々と動き続けているのだということが実感できる。

旅の終わりでおじいちゃんがつぶやく、

じつは…ハワイはもう地球にないんだ

日本列島も存在しない

というセリフに、もしかしたら軽いショックを受ける子供もいそうだが、フィクションに包むことで深遠さは和らぎ、ソフトな印象になっている。

 

私がちょっとショックというか驚いたのは、昨日のNHKの番組だ。

ハワイや日本列島が存在しないというレベルの話ではないが、九州はあわや真っ二つになっていたかも?という話だ。真っ二つになる原因が「地球内部の動き」なら、逆に真っ二つを食い止めたのも「地球内部の動き」が関わっているという。九州が一つの島として出来上がっているのに、桜島もひと役かっているとは胸熱だ。

 

しかし、一部の子供たちは(私も)さらに、

なんで見たこともない地球のなかの様子がわかるの?

という謎がわいてくることだろう。上記で触れたように「作者のことば」で少しだけ解説されてはいるけれど、その辺のところも「たくさんのふしぎ」で詳しく知りたいものだ(大人なんだから少しは自分で調べて勉強しろって?)。