こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

大きな 巨きな木(第270号)

 地球に生きているすべてのなかで、もっとも大きな生き物が、じつは木などだということを、みなさん、知っていましたか?ゾウだって、クジラだって、木の大きさにはかないません。 

たくさんのふしぎ」は、判型が決まっているし、ページ数もほぼ決まっている(本文40ページ)。表紙に盛り込む項目もだいたい同じだ。月刊誌だから当たり前だが、つまり「型」がある、制約があるなかで本づくりをしている。

この『大きな 巨きな木』は、決まった枠があるなかでどうやって伝えればいいのか、かなり苦心したのではないだろうか。テーマは巨樹。その大きさ、そのすごさ、ふしぎな力。写真をメインにするならば『地球のすばらしい樹木たち―巨樹・奇樹・神木』のように、大判の写真集に仕立てるほうが、圧倒的にわかりやすい。25×19センチの制約のなかで、いかにして偉大さを表現するか。

たとえば「ナショナル・ジオグラフィックの樹*1」は、紙面に展開するにはあまりに大きすぎる。全貌を写真に収めることができないので、足もとすぐそばから見上げる形で撮られている。

メキシコラクウショウの「トゥーレ・サイプレス」で驚くべきは、幹まわりの太さ。その大きさを見せるために、片観音折り込み3ページを費やし余すところなく表現している。このページのため、本号は変形42ページ構成だ。『地球のすばらしい樹木たち―巨樹・奇樹・神木』では「木の方がわたしたちを抱きしめてくれる」と書かれているが、宜なるかなという感じである。遠くから見たら木ではなく、こんもり茂った森にしか見えないのだ。

写真で伝えきれないなら、文章の説明も大切になる。ジャイアント・セコイアの「ジェネラル・シャーマン」は、体積世界一の木。1978年に折れた枝は、なんと直径1.9メートル、長さ42メートルにも及んだという。日本でいちばん高いスギですら「高さ50mに達するものもあるが」くらいなのに、枝だけで40メートル超!この木1本で5LDKの家が40軒建ち、運ぶとしたら貨車なら30輛、ピックアップ・トラックなら2770台が必要になるという。途方もない大きさであることがわかるだろう。

驚くべきはデカさだけではない。ジャイアント・セコイアは、何度も何度も山火事に見舞われているが、山火事は、ジャイアント・セコイアの成長にとって重要な役割を果たしてきたというのだ。

すごい自然のショールーム --- ジャイアントセコイアの長生きの秘訣は山火事

アメリカの国立公園では、雷などで自然発火した山火事はあえて消さないことにしているという。

しかし、カリフォルニア州で深刻化している山火事の影響で、「ジェネラル・シャーマン」のあるセコイア国立公園は現在閉鎖の憂き目にあっている。報道で見る現地の様子は、まるでこの世の終わりのようだ。ジャイアント・セコイアたちは、いつもどおりこの山火事を乗り切って成長の糧にするのかもしれないが、まずは無事の鎮火を祈らずにはいられない。

月刊 たくさんのふしぎ 2007年 09月号 [雑誌]

月刊 たくさんのふしぎ 2007年 09月号 [雑誌]

  • 発売日: 2007/08/03
  • メディア: 雑誌

*1:本号では「世界一高いレッドウッド」と書かれているが、現在は5番目。『National Geographic July, 1964, Vol. 126, No. 1』で紹介されたので、"National Geographic"という名前が付けられている