こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

この子 なんの子? 魚の子(第294号)

(息子に付き合って)野鳥観察してると、もう付き合いきれん!と思うことがある。

それは識別だ。

オスとメスで風貌が違ったり。夏と冬で羽の色が違ったり。幼鳥と成鳥で違ったり。

もうなんの鳥か区別がつかないよ〜。

そりゃまあ人間だってオスとメスとじゃずいぶん違う。子供だって赤ん坊の頃と今とでは顔も形も違いますし。面影は残ってるけどね。

じゃあ魚は?

魚?魚の子供時代とか考えたこともなかった。なんか違うもん?

その違うさまを具に教えてくれるのがこの絵本だ。

とにかく読んでみて!と言いたくなる。ページをめくるたび驚きの連続なのだ。

驚きは「魚の子」から「魚」に変わる七変化だけではない。その変化もすべて、海の中で撮影されたものだということ。魚の成長具合など、幼魚のうちに捕まえてきて飼育すれば容易に観察できる。しかしこの絵本は違う。海の中での観察なのだ。まず目的のその魚を探さなければならない。

だからときおり、

自分でも途中の変化を見たくて、いまもさがしています。

とか、

雄に変化する途中のものをさがしていますが、まだ見つかりません。

とか、

小さくて透明なので、どちらの子どもか、まだわかりません。

とかいう説明も見られる。

それでも、タテジマキンチャクダイの成長過程を比べたものは圧巻。1.5cmサイズの幼魚から30㎝の成魚まで7つの段階を比べることで、模様が変わる様子を追うことができるのだ。この7つの写真を撮るまでにどれくらいかかったのだろう?

そんな「時間」を感じさせないのが、この絵本のすごいところでもある。著者といっしょに海に潜って、いま、観察してる気分になれるのだ。

最後は、どの幼魚がどの成魚になるか当てっこクイズ。

このクイズがあることで、よく見比べて観察する練習にもなるのだ。一見まったく違うように見えても、ヒレの形や模様の様子に面影が残ってるので意外と見分けることができる。大きさも明記されているので、定規使って大きさを実感しながら見比べるのも面白い。こんな小さなのがこんな大きくなるんだ!と驚くことだろう。

考えてみれば人間の子も同じですね……。

50cm足らずだったものが今や160cmを超え、およそ3kgだったものが50kgに達しようとしている。彼だって、成長する過程のときどきで、体つきも声すらも変化していたではないか。すぐ近くにいるとなかなか成長(変化)を実感できないものだけれど……。