こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

光るきのこ(第459号)

おもて表紙から裏表紙に至るまで「光るきのこ」が満載!

その幻想的な姿をたっぷり紹介した一冊だ。

冒頭、

 夜の撮影でも、とくに心おどる瞬間は、ホタルなどの生きものがはなつ光と、空高い星の光が同時に見られるときです。

 その競演は、時間のたつのもわすれるほどに見入ってしまいます。

とあるが、やはり圧巻は28〜29ページ、ツキヨタケと天の川の競演。

もちろん、偶然に頼ったものではなく計算の上で撮られている。それでも自然相手のこと、必ずしも狙いどおりの絵を取れるわけではない。自然が作り出す絵は人間を待ってくれないのだ。ほんのわずかな差で、シャッターチャンスを逃すこともある。

19ページ、アミヒカリタケとヤエヤマヒメボタルのツーショットは、作者ならではの写真。ささやかな光だけど、光る生きものたちのちょっとしたパーティみたいだ。

昼間の姿と夜の姿を比べた写真もあるが、まるで印象が違うのに驚かされる。昼間はそれと知らなければ目にも留まらないような儚さがあるが、夜の存在感ときたら別の生きもののようだ。25ページ、ツキヨタケに乗っ取られたかのようなブナの枯れ木は、生ける死装束をまとっているかのよう。ほとんどのきのこが慎ましやかに写るのとは対照的に、旺盛な生命力を見せつけている。

作者が光るきのこを求め、全国を飛びまわるさまはこれもきのこの策略か!?と思うくらいだ。

 その考えとは、きのこが光る理由は、闇夜で目立つことで虫などの生きものを集め、彼らに食べられるようにするためということ、食べられることで胞子をより遠くへ運んでもらい、子孫の生存範囲を広げる作戦ではないかということです。

 だから、きのこの光が一番強いときに、たくさんの胞子を飛ばすに違いないと思ったのです。

きのこの光が一番強いとき、つまり絵になる光が撮れるときは、たくさんの胞子が撮影者にも付くに違いないのだ。

この本には、きのこが光るメカニズムや、なぜ光るのかの説明はほとんどない。ただ光るきのこの夜の姿を存分に堪能すればよい。それだけで十分だからだ。作者の撮影体験記をなぞりながら、現地で見ているかのように楽しめる。

 

作者は、闇の中でほのかに浮かび上がる光を愛し、本を作ってきた。

本をさがす|福音館書店

『光るきのこ』もそうだが、どの「ふしぎ」の表紙も、シンプルで美しい。「たくさんのふしぎ」のロゴの色合いもこれしかないというくらいキマってる。本屋さんでも図書館でもぜひ面出しして置いてもらいたいものだ。図書館だと面出しするのは新刊のみが多いし、新刊にはカバーがかけられてしまっているのが残念なところだが。

ちなみに本号、きのこ恐怖症の家の子には手に取ってもらえなかった……。