シャボン玉って意外とじっくり観察する機会がないものだ。
子供の頃は吹くのに夢中だし、大人になってから遊ぶ機会はほとんどない。子供ができたとて、やるのは子供自身。親はただ見守るだけだ。
シャボン玉の道具、いつか遊ぶかな〜と思ってずっと取っておいてたけど、いつの間にか子供は大きくなってシャボン玉で遊ぶことなんて思いつきもしなくなっていた。
しかし。
大人になっても、いや大人だからこそ、シャボン玉に魅せられてしまう人はいる。
シャボン玉は、黄色や紫、ピンクや緑色など、いろいろな色に光る。
その色はたえずかわる。
石けん水は色がついていないのに、どうしてこんなにきれいな色があらわれるのだろう。
確かに。
かのニュートンやノーベル物理学賞を受賞したペランもその一人だという。
https://www.sci-museum.jp/wp-content/uploads/2022/02/202201_04-09.pdf
この絵本はその、シャボン玉の色の秘密を探ろうというものだ。
君たちもニュートンやぺランの気持ちを味わってみない?
小さい頃と同じシャボン玉遊びもいいけど、ちょっと背伸びして、シャボン玉の色をじっくり観察してみようよ。
幼児向けの「かがくのとも」と違うのは、こういうところだ。同じ遊ぶのでも、ちょっと大人の、科学者の視点で見てみようよということ。
シャボン玉はとても敏感だ。
やさしく語りかけなければ、
シャボン玉は語ってくれない。
4〜5ページではさっそく「シャボン膜をつくる」。
シャボン玉じゃない「シャボン膜」だ。
懇切丁寧に注意をうながし、シャボン膜の作り方を説明してくれている。
材料は……
台所用液体洗剤、針金、キャラメル箱、小瓶、グレープフルーツ、以上。
例示される台所用液体洗剤が「ファミリー」「ナテラ」というのが時代を感じさせる。
キャラメル箱?グレープフルーツ?何に使うの?と思われることだろう。
キャラメル箱は針金を成形するのに、グレープフルーツは二つに切って食べた後、半分を瓶の蓋がわりに使うのだ。
なぜ蓋が必要か?シャボン膜を長く観察するため。うまくすると何日も壊れないで観察が続けられることもあるという。
もちろん「シャボン玉をつくる」のもある。こちらも長く観察する用のものだ。
台所用液体洗剤、小瓶、グレープフルーツまでは同じ。大きなシャボン玉を作るために用意するのはなんとキュウリ。太いストローがなかなかないので、キュウリを太めの輪切りにして箸で穴を開け、穴にストローをぶっ刺して使うのだ。今ならタピオカ用のストローが使えるかもしれない。
どちらも家にあるようなもの、スーパーで普通に買えるようなもので作れるから、気軽にできる。
気軽にできる……とはいえ、メインの目的はシャボン膜やシャボン玉を作ることではない。
観察することだ。
だからこの本には、観察した経過の写真がふんだんに盛り込まれている。
もちろん自分の目で見るのがいちばんだが、観察した写真を見て考えられるようにもなっているのだ。
シャボン玉の色のかわりようは、シャボン玉がどう変化しているか(その膜のあつさがどうんなふうにかわっているか)を、私たちに伝えてくれる。
シャボン玉と熱心にやさしくつきあえばつきあうほど、私たちは、それだけたくさんのことを、シャボン玉の色のもようから読みとることができるようになる。
シャボン玉の色の変わりよう、シャボン玉がどう変化しているか……
それこそ熱心にやさしく、その原理の説明がされているが、小学生にどこまで理解できるかな?という感じだ。「作者のことば」では、石井淑夫先生が「むずかしくても大切なことはくわしく書きました」とおっしゃっているが、たとえ完全には理解できなかったとしても、シャボン膜の魅力を知ってほしいという熱意が存分に伝わってくる。
その熱意の一つが、シャボン玉が壊れる瞬間のビデオ撮影だ。
高速度ビデオカメラなんて、本号発行当時1990年代にはまだまだ手軽に使えるものではなかっただろう。
しかも「吹いたとき」「線香を近づけたとき」「つついたとき」「金属の玉をおとしたとき」「水玉をおとしたとき」など、いろいろなシチュエーションで撮影をおこなっているのだ。好き放題というとアレだが、楽しんで実験してたんだろうなあと。
最後は「シャボン玉がちぢみたがる性質」つまり表面張力の話。
シャボン玉が「近道」を教えてくれたり、立方体や三角柱の枠の中に不思議な形の膜が出来上がったり。本誌ではガラス棒で枠が作られていたが、針金でもできるようなので、やってみると面白いかもしれない。
【表面張力】立方体がつくったシャボン膜 | 自由研究におすすめ!家庭でできる科学実験シリーズ「試してフシギ」| NGKサイエンスサイト | 日本ガイシ株式会社
自分でも、ありあわせの材料で作ってみた。
空き瓶に、針金はゼムクリップで代用。適当に成形したので変な形になっている。
確かに写真撮影が大変だった。写真のテクを知ってる人はきちんと撮れるのかもしれないが。
こちら↓には、「たくさんのふしぎ」に出ているものからはちょっと進んだ観察装置が紹介されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/44/8/44_KJ00003519106/_pdf/-char/ja
ゼムクリップを使い、無理やり「立方体」を作って実験したもの。無理やりすぎて立方体になってないがそれなりに面白かった。