こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

フレ!フレ!100まんべん(第93号)

タイトルで内容を当てられるだろうか?
「100まんべん」がヒントになる。
確率のお話なのだ。

確率ネタといえば『デタラメ研究所(第401号)』がある。
切り口はデタラメつまり「乱数」だった。
サイコロのどの目も、出る確率は6分の1。でもサイコロの目の出方はデタラメだから、サイコロをふる回数が少ないほど「かたより」が生じてしまう。ふる回数を増やせば増やすほど、かたよりが目立たなくなり6分の1に近づいていく。

10回、100回、1000回……

10000回……100万回もふればかなり正確に6分の1になるよ
(『デタラメ研究所』29ページより)

100万回もふれば……ってそう「100まんべん」だ。
もちろん100まんべんなんて難しい。
『デタラメ研究所』のエヌくんは60回試している。
『フレ!フレ!100まんべん』のタカシはというと……なんと120回だ。

タカシのサイコロ

フレ!フレ!120ぺん

フレ!フレ!というのは単なるかけ声ではなく、サイコロを振れ!ということなのだ。14〜15ページには実際に出た目の一覧がずらっと絵に描かれている。

そもそもなんでサイコロをふる話になったか?
はじまりはお祭りのくじ。

クジA:トランプのカードをひく。❤️がでたらアタリ。
クジB:サイコロをふる。1か6がでたらアタリ。
クジC: 100円玉を2枚なげる。オモテとウラ両方出たらアタリ。

アサコタカシナオキの三人は、どのクジがいちばん当たりやすいか考えることになったのだ。

6〜7ページで繰り広げられる対話は三者三様で面白い。
アサコはサクサク考えて答えを出していく。
タカシはクジCについて、アサコの「2回に1回当たり」という考えに疑問を投げかける。「オモテーオモテ」「ウラーウラ」「オモテーウラ」の三通りになるから「3回に1回当たり」だというのだ。
ナオキにいたっては……お前はどっちなんだと問われ「アサコのいうとおり」と答える始末。自分の頭で考えろよと詰められて「アサコの意見の方がアタリが多いってのも自分の頭で考えたものだ」と屁理屈をこねている。

つべこべいってないでやってみたらと水を向けたのはアサコ。
タカシはクジBのサイコロを、ナオキはクジCの100円玉にチャレンジすることになる。結果、タカシは12回中5回、ナオキは12回中6回の当たりが出る。

ナオキ「そらみろ、やっぱり100円玉は2回に1回はアタリじゃないか。3回に1回なら、4回しか当たらないはずだろ」

タカシ「おまえ、運がよくって、当たりすぎただけだよ。トランプだって、つづけて❤️がでることあるだろ」

運がよくって、当たりすぎただけ
トランプだって、つづけて❤️がでることある

まさに『デタラメ研究所』でいうところの、試技が少ないからかたよりが出たんじゃないかということだ。

じゃあもっとやろうと言う二人に、お金かかるから家でやれと諫めるのはアサコ。現実的やな〜。

そこで舞台はタカシん家にうつる。それぞれ120回、チャレンジすることになるのだ。

2人がどうなったかを見る前に、自分でやってみてください。できたら友だちと手分けして、それがダメなら、しょうがない、1人2役でやっちゃおう。

自分でやってみてくださいか〜……こういうチャレンジをしようと思えばできるのが小学生の特権なのだ。時間がたっぷりある。タイパ時代の子供たちはやりたがらないだろうか。

しかし。120回くらいじゃまだまだ納得しないタカシ。じゃあトコトンやろうぜと応えるナオキ。100円玉投げの方だけさらに1200回、二人合わせて2400回の試技を行うことになる。

アサコは、あきれて途中で帰ってしまいました。


彼女はどこまでも現実的だ。

 

24〜27ページはインターミッション。
タイガー立石のイラストがドドんと展開される。
それまで考えることが多かったので、頭を休めるのにぴったりだ。

2400回試してもなお、納得できないタカシ
今度はナオキの家で議論再開だ。
ああだこうだ言い合ううちに、ナオキのお父さんがお客を連れて帰ってくる。
なんとクジの胴元である“ウマさん”だ。
ウマは、確率を考えるのにとっておきの武器を紹介する。

樹形図だ。

この絵本の最終的な目的は、樹形図を使って確率を考えてみようというものなのだ。

実際にやってみる(具体)から、図式や計算で考える(抽象)へ。

『デタラメ研究所』でも、自然現象のなかには予測可能な「複雑な」現象もあるが、長い間観察や実験を重ねることで、予測可能なものと予測が難しいものを見分けられるようになってきた、とある。たとえば日食月食などは日時まで正確に予測できるようになった。

どんなことでもまずは、観察や実験(具体)が元になるのだ。
「自分でやってみてください」というのはそういうことだ。
だからこそ『フレ!フレ!100まんべん』は、実際に試して考える場面に多くを割いている。樹形図は抽象だが、それを自分で書くことも「実際に試して考える」そのものだ。

子供の「抽象的な考え」を育てるには、たくさんの「具体」が必要なのではないか。今の学校ではあれもこれもと学ぶことが多くなっているが、もう少しゆっくりと体験する時間を取ってやれないものかなあとも思う。

このエントリーをもって、1-100 カテゴリーの記事をすべて書き終えたことになる。

そこで、第1号〜100号までの記事一覧を発行番号順にご紹介する。

空とぶ宝石 トンボ(第100号)』に追記したので、興味のある方はご覧ください。その他も書き終わり次第、一覧にする予定。