こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

野菜の花が咲いたよ(第220号)

今は亡き、子供の曾祖父母の家は専業農家だった。

たまに遊びに行くと、畑でとれた野菜をどっさり持たせてくれたものだった。米農家なので、野菜はあくまで自家用に作ったもの。それでもさすがはプロ。商品としても通用するような立派なものだった。当然、おいしかった。

私の父も家庭菜園をやっていて、時折とれたものを送ってくれるが、やはり趣味の域を出ないものがほとんどだ。味は良くても形が悪かったり、形が良くても食感はいまいちだったり……。もちろん、口に出したりはしないけれど。

 

野菜の花を愛でる、じっくり観察する、ということに限っては、「野菜づくりのプロ」にはできないことではないかと思う。

『野菜の花が咲いたよ』の作者も野菜づくりをしているが、畑がイノシシや虫に襲われても、収穫時期を逃した野菜が花を咲かせても、楽しめるのはアマチュアだからだ。こういう「優しさ」を、農家の人がもつことは決してない。アマチュアだからこそ「野菜の花のプロ」になれるのだ。

とはいえ、アマチュアも簡単ではない。

子供が学校から持ち帰ったミニトマトの苗は、ハダニにやられ、実どころか花を見ることすらなかった。

市のイベント「田んぼの学校」で作ったバケツ稲は、どうにか実るところまでいったものの、その短い花の命を観察する余裕はなかった。

世話をするだけで精一杯という状況でも、野菜の花を楽しむことはできない。何年にもわたって植物を育て、よく観察し、実りを得たものだけが、野菜の花といのちを愛おしむことができるのだ。 

同時に読んだ本。

やさいの花 (ふしぎいっぱい写真絵本)

やさいの花 (ふしぎいっぱい写真絵本)

「野菜の花」入門としてうってつけの本だと思う。子供向けと侮るなかれ。写真もきれいだし、本の作りも解説も簡潔でわかりやすい。フランスでどうやってジャガイモを食用として広めていったか、という逸話が面白かった(『じゃがいものふるさと(第275号) 』)