転勤で山口県に住んでいたとき、親や友人たちを必ずといっていいほど案内していたのが秋吉台。社会の教科書でおなじみの場所だが、案外行ったことのない人が多い。私自身、山口に来て初めて訪れたくらいだ。
『どうくつをたんけんする』の舞台も秋吉台。
主人公の“かずおくん”を『夏休みに、どうくつをたんけんにきませんか?』と誘うのが、“どうくつ研究所のせんせい”なら、かずおくんと一緒に探検に出るのは“みよちゃん”。みよちゃんは先生の娘なので、この辺の地理の特色については、かずおくんに物を言えるくらいに詳しい。先生と子供たちというメンツで進む話は『海藻はふしぎの国の草や木 (たくさんのふしぎ傑作集)(第62号)』と似たような設定だ。
先生が先導する洞窟探検はハードだ。ヘルメットを着け、懐中電灯片手に、肩まで水に浸かりながらずぶぬれになって進んでいく。岩に頭をぶつけ、水の冷たさに泣きそうになり、つるつる滑る岩を必死に登ってゆく。
冒険のあとは、秋芳洞の観光ルートを歩きながら、鍾乳洞についてお勉強。鍾乳洞はどうやって出来上がっていったのか。鍾乳洞を構成する石灰岩は何を元にどうやって作られたのか。鍾乳洞だけでなく洞窟全般の話にまで及んでいく。かつて人間は洞窟を住まいにし、絵を描いたりしていたことも。洞窟にすむ生きものたちの観察や、どうやって生活しているのかの話もあり、盛り沢山の内容となっている。
洞窟といえば、亡き和田慎二の名作『銀色の髪の亜里沙』を思い出す。自分の意志でないが、亜里沙は洞窟を住まいとし、洞窟の生きものたちを糧に生活していた。狩猟採集生活をしていた昔の人間のようだ。生きるために生活するために、彼女の身体能力は飛躍的に向上してゆく(これがお話の伏線の一つとなっている)。しかし……『どうくつをたんけんする』で紹介されている洞穴生物たちは、どれもこれも食欲をそそらない生きものばかりだ。フィクションをリアルで想像するのもなんだが、亜里沙たちはずいぶんと大変な生活を送っていたものである。
私はもう本格的な洞窟探検をするような体力も気力もない。楽しめるとしたらせいぜい観光洞窟くらいなものだろう。だが観光洞はライトアップされたところが多く、名所には「五月雨御殿」など名付けられていたりもする。鍾乳洞はそれだけで美しいのだ。華美な照明を施したり、看板のような人工物を置かない方が好ましい。観光地である以上致し方ないことかもしれないが。
フーチャは海蝕洞。
本書にも、
と書かれている。へ〜海水は石灰岩を溶かさないなんて初めて知った。一口に洞窟といっても出来上がり方はさまざまなのだ。
ちなみに、本書の「世界の石灰岩地帯とどうくつ」として紹介されたページには、グローワームが生息するワイトモ洞窟も載っている。