本書は、”ノースウッズシリーズ”の最初の作品だ。
出版順は、
『ノースウッズの森で(第246号)』
『森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して(第330号)』
つい最近、大竹英洋のナショジオの連載をまとめた本が出たので、読んでみた。
著者の道を決めたのは「夢」だった。大学4年当時、自然相手の写真家になることを決心していたものの、最初の撮影テーマについて決められずにいた。その晩見た夢で、彼は北国を思わせる針葉樹の森にいて、そこで一頭の立派なオオカミと「出会う」のだ。
ふだんは夢のことなど興味すらなかったのに、
夢に現れたオオカミはあまりにリアルだったし、その夢を見たタイミングが、ぼくにとっては大きな意味をもっていたのです。
次の日、オオカミをもっと知りたいと思って図書館に足を運んだ彼は、『ブラザー・ウルフ―われらが兄弟、オオカミ』という写真集と出会うことになる。その著者こそが、ジム・ブランデンバーグだった。写真集に衝撃を受けた大竹は『Chased by the Light』を購入し、私がはじめにジムの写真を見た「ナショジオの1997年11月号」も手に入れることになる。
ジムに弟子入りしたいと願うようになった著者は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」編集部からアドバイスをもらい、ジムに宛て手紙を書くことにする。しかし、三ヶ月を過ぎても返事はこなかった。進路が決まらないまま卒業した彼は、ジムに会いにアメリカへ渡る決心をするのだ。
家の場所など知っているわけではない。手がかりは、前述のナショジオの記事に載っていた「Ely」という町、『ブラザー・ウルフ』の中に写っていたジムの小屋の写真、そして、『ブラザー・ウルフ』にあった手描きの絵地図、という何とも頼りないもの。こんな三つきりだけで、とりあえずミネソタ州のミネアポリスまで飛ぶことになる。
彼がジムと出会えたかどうか……『そして、ぼくは旅に出た。』を手に取ってぜひ確認してみてほしい。ジムを探す旅の過程は、人との出会いに満ち、縁というものを感じさせる、まさに”スピリチュアル・クエスト”と呼ぶに相応しいものになっている。私は日本語のスピリチュアルという言葉に、気恥ずかしさを感じてしまうたちだが、こればかりはこの言葉を使うほかはないと思う。
残されたふしぎは……なぜ大竹英洋は「たくさんのふしぎ」をかくことになったのか?ということ。『家をせおって歩く(第372号)』は、たまたま巣鴨で福音館書店の人たちに目撃されたことからできた本らしいが、大竹氏はどういう縁で「たくさんのふしぎ」と結ばれたのだろうか?
- 作者: 大竹英洋
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2011/03/25
- メディア: 単行本
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- 作者: 大竹英洋
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2017/03/02
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