こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

小さな卵の大きな宇宙(第166号)

ふしぎな絵本だ。

まるで卵のかけらのような断片的なお話の数々も、自分を「おじさん」呼びする語り口も。

卵というひとつのテーマで結ばれているものの、マグリットの絵で始まり、ハンプティ・ダンプティぐりとぐら、もちろんイースターも、エッグ・ダンスの話があると思えば、最後は『モンテフェルロ祭壇画-聖母子と聖人たち』(ピエロ・デッラ・フランチェスカ)で終わるという、なんとも捉えどころのない、ショートフィルムを次々と見せられているような感覚の絵本になっている。

たとえば「大きな卵」のおはなし。『ぐりとぐら』の卵から、エピオルニスの卵*1の話につながり、続いて『アラビアン・ナイト』の怪鳥ロックの卵が登場する。そして宇宙卵の話にまで到達するのだ。著者は、

 なんて美しい夢だろう。なんてすばらしいドラマだろう!それに、なんてでっかいパワーのある卵なんだろう! 

と感動をあらわにしている。

ページをゆっくりめくりつつ、じっくり想像しながら読み進めていくと、頭の中に数々の「卵のお話」が広がって、遠い時代、遠い世界を旅してきたような気分になってくる。 

 じっと卵を見ていてごらん。小さな卵が、地球のように重く見えてこないか?

 何千年、何万年もの人間の歴史、何億年もの宇宙の歴史、愛や戦争や、誕生や死や、喜びや悲しみや、すべてのいのちのひみつが、この小さな卵のなかにひめられているように見えてこないか?(本文より)

愛や戦争や、誕生や死や、喜びや悲しみや、すべてのいのちのひみつ…思い出したのが『卵をめぐる祖父の戦争』だ。まさに愛や戦争や、誕生や死や、喜びや悲しみが、卵をめぐるお話のなかに詰まっている!

『小さな卵の大きな宇宙』の最後は「おじさんにはひとつの夢がある」と、卵にまつわる夢について語られているが、これがまた奇妙な夢だ。かなえられる夢ではあるけれど……その後「おじさん」は、夢を実現することができたのだろうか。Eiertänzerという苗字の人には出会うことができただろうか。

*1:たくさんのふしぎ」では『恐竜はっくつ記』、『巨鳥伝説』でも取り上げられている。