こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

人と自然がであう場所  僕のデナリ国立公園ガイド(第297号)

ダーウィンが来た!を見ていたら、野村哲也*1があらわれた!

南米で目撃!ホタル謎の大乱舞」で、「情報を寄せた日本人写真家」として、取材スタッフと共に撮影に臨んでいた。世界各地を飛び回り撮影をおこなっている野村氏のこと、ダーウィンに登場しても何らおかしくはない。

写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹” チーム・ダーウィン

写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹” 今夜放映

ホタルの乱舞自体は山口在住時代に見たことがあるが、同じものとは思えないほどの光の洪水だ。日本のホタルが静的な美しさだとしたら、こちらはダイナミックな美しさ。画面越しでも伝わるくらいだから、その場にいたらもう言葉にならないのではないだろうか。ホタルといえば水辺に暮らすイメージがあるが、このアルゼンチンのホタルはパンパにすむ陸生のホタル。世界的に見ると、このような陸生ホタルの方がずっと多いのだ。

 

世界を駆け回る野村氏の、原点ともいえる場所こそ、本号の舞台であるデナリ国立公園だ。石川直樹氏が20歳でデナリに登れば、野村氏は19歳でデナリ国立公園を訪れる。お兄さんからアラスカ旅行の話を聞いたことがきっかけだ。バイトで旅費を貯め、いざお兄さんに行き方を聞きに行くと「自分で調べろ」というつれない返事。「計画するところから、旅は始まっているんだ」と。結局あまり情報を得ることができなかった野村氏は、

 英語などろくに話せない僕は、キャンプ場の事前予約をあきらめ、8月下旬、わずかな情報を頼りに、とにかく成田空港からアンカレッジに向かった。

という暴挙?に出るのだ。若いってすごい。行動力すごい。

そのときから野村氏は、大学の休暇を使って足繁くアラスカに通い、山岳風景や野生動物の写真を撮り続けることになる。

学生時代から10年後、著者は再びデナリ国立公園を訪れる。学生の時は休暇の関係で秋のデナリだったが、今回は春のデナリ。今度の旅は行き当たりばったりではなく、パソコンでホームページを探し、そこから園内のバスとキャンプ場の予約をきちんと済ませている。

本書は学生時代と、今回の10年後を混えた構成で作られているが、初めて訪れた時の瑞々しい感情と、経験を積んで再びデナリを感じたときの気持ちがともに書かれていて、そこが魅力にもなっている。写真は必ずしも美しいというわけではないが、野村氏が感じたそのままが写されていて、「のデナリ国立公園ガイド」というタイトルにぴったりの本だ。

19歳の時、無我夢中で撮ったムース(ヘラジカ)の写真。青空のもと純白に輝くデナリを背景に、悠々と歩く雄のムースが写し出されている。デナリ国立公園では「クマは300ヤード(約274m)、ほかの動物には25ヤード(約23m)以上近づかない」というルールがあるのだが、ひきつけられるようにどんどん近づいてしまう。

 人と野生動物とのあいだには、おかしてはならない距離がある。それを「ナチュラルディスタンス(自然の距離)」*2という。僕がそのことを知ったのは、もう少し後のことだ。

今や人と人とのあいだにも、おかしてはならない距離、「ソーシャルディスタンス」を取ることになってしまった。

オオカミに遭遇したときのページも素晴らしい。オオカミと対峙したときの、ヒリヒリするような緊張感。撮られた写真は、オオカミに負けてしまっている。こんな写真は、今の野村氏には決して撮れないものだろう。

本号はガイド、と名付けられているように、デナリ国立公園への行き方や、キャンプ場の施設情報や値段、どこのキャンプ場から見たデナリが最高かなど、細々した情報も少しずつ記されている。お兄さんには「自分で調べろ」と言われた著者は、これを読む子供たちには惜しげもなく情報を提供している。それは、

ぜひ、デナリの大自然をひとりでも多くの若者に見てほしいと思っている。

からなのだ。

現在はデナリ国立公園もご多分にもれず、時間を変更したり一部施設を閉鎖するなどで営業をおこなっているようだ。感染症流行の収束が見通せない今、海外どころか国内の移動も勧められない状況だが、いつか息子も、“鳥類の生息地としても有名である”デナリ国立公園を訪れる日がくるだろうか。

月刊 たくさんのふしぎ 2009年 12月号 [雑誌]

月刊 たくさんのふしぎ 2009年 12月号 [雑誌]

  • 発売日: 2009/11/02
  • メディア: 雑誌

付録「ふしぎ新聞」の「みみずの学校」は、

2020年の自分から、今の自分に手紙が届いているっ‼︎ さて、キミの手紙には何て書いてあった⁉︎

というネタで投稿(登校)が募集されていた。

★手紙には、「ぼくはふしぎ新聞社で、タ記者として働いている」と書いてあった。校腸は2020年でもビールを飲み続けているそうです(栃木・虫ハカセ

に対する校腸アンサーは、

◎イヨッ、タ記者誕生。オ記者がオッホン、上司かな。その頃、ふしぎ新聞は500号にむかって頑張ってる。校腸はビールに飽きて、ボタ餅食ってる!

この号は297号だったが、2020年の今、300号、400号を超え、たしかに500号へむかっているところだ!

★「大至急だ!2020年の自分の家に、ターミネーターが襲ってきた。2009年の自分、助けてくれよ〜 無理か……」と書いてあった(埼玉・みゅう♂)

 には、

◎やるっきゃない!助けたいけど、でもどうやって未来に行く?オ記者が2020年に通勤で利用してるリニア新幹線が、どこかで今とつながってるかも。

残念ながらリニア新幹線は今も開通していない。10年後の2030年でも開業してるかあやしいところだ。ターミネーターじゃなくて、SARS-CoV-2というウイルスが襲ってきて大変なことになっているよ…。

★「何とかしてくれないと消費税が30%になって、貧乏人は物が買えません」(神奈川・哲)

という未来予想も。さすがに30パーは盛りすぎだけど、10%までは上がったよ。

この号に登校した子供たちは今ごろどんな大人になっているだろうか?

*1:

砂漠の花園(第224号)

イースター島 ちいさくて大きな島(第359号)

ナミブ砂海 世界でいちばん美しい砂漠(第374号)

ポリネシア大陸(第422号)

*2:漁師とヒグマ』で書いたNHKの番組で、ユネスコ調査団の研究者がクマとの距離の近さに驚いていたが、おそらくこのナチュラルディスタンスの考えを念頭に置いているからこその驚きだったのだろう。