こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

エネルギー(第315号)

体中みなぎる すばらしいエネルギー
爆発寸前の強力なエネルギー

↑ THE HIGH-LOWS ↓「E=MC2

 

シンプルな絵本だ。

1ページにあてられる文章は10行にも満たない。しかもフォントは大きめだ。スズキコージ描くイラストを生かすかのように、最小限にとどめられている。

エネルギーとは何か、そんな説明が難しいものをこんなに美しく仕立てられるとは。

ふつう、子供向けのエネルギーの本を作ろうと思ったら、同じ池内先生作の『エネルギーってなんだ?―エネルギー基礎知識 (なぜ?なに?よくわかるエネルギー教室)』のようになることが多い。環境問題やエネルギー問題を考えるための本だ。どちらかというと、エネルギーそのものではなく、エネルギーの使い方・使われ方に焦点を合わせがちになる。

もちろん、そういう本も必要だ。

『エネルギーってなんだ?』は、本号と比べればボリュームたっぷり、具体例も豊富でわかりやすく作られている。

たとえば熱エネルギーひとつとっても、本号ではたった5行足らずの説明だけど、『エネルギーってなんだ?』の方は、まき、木炭、石炭、石油、天然ガスそれぞれどれくらいエネルギー量を持っているか、詳しく解説されている。

動物が食事して食べものを分解し、化学エネルギーを取り出していることについては、本号では2ページで10行程度の説明だけど、『エネルギーってなんだ?』の方は、人間活動を含めての解説がされている。すなわちヴァーチャル・ウォーターを考えると、「牛丼」一杯であっても莫大な水を輸入していることになるというのだ。牛肉輸出国、アメリカやオーストラリアでは、水を地下から電気で汲み上げるので、そのことを考え合わせると、水のエネルギー使用量は膨大なものになるだろうということが説明されている。

『エネルギーってなんだ?』はこの1冊だけでなく、4冊シリーズで出されているので、全巻をとおして、さまざまな視点からエネルギーを学べるようになっている。

エネルギーがなくなる?―エネルギーと環境問題

新しいエネルギーってあるの?―エネルギーの未来

私たちのエネルギー大作戦―エネルギー実践事例

 

環境問題とか省エネとか、今ならSDGsとか。そういった問題を考え、行動につなげていくのも大事だ。現に今、待ったなしでエネルギー危機が迫りつつあるのだから。しかし、本号『エネルギー』はそういうことを直接考えさせる本ではない。視点はそこにはないのだ。

本書が見せたい真のところは何か?

エネルギーとはなにかという根源的なものだ。環境問題とか省エネとかSDGsとか、そういう「色」を付けずエネルギーそのものを考える。それを通して見せたいのは「科学する」ということ。『重さと力 科学するってどんなこと?(第301号)』と共通することだ。

「作者のことば」では、次のように解説されている。

 本書では、エネルギーのいろいろを整理した上で、その大もとを探っていくことにしました。まず身近に溢れるエネルギーを種類ごとに分類して見通しをよくした後、それらお互いの関係を追いかけていきます。エネルギーはさまざまに形を変えていくことが大きな特徴ですから、どのようにつながっているかを見極めねばなりません。そうするなかで、エネルギーのほとんどは太陽からやってきていること、その太陽も大宇宙に起源があることにたどり着きます。つまり、エネルギーの流れを順序立てて追跡することによって、私たちは宇宙としっかり結びついているとわかるのです。(本号「作者のことば」より) 

エネルギーのことを考えてたら、宇宙まで飛んでいく。

宇宙とわたしたち(第385号)』もそうだったが、ここにいる自分という小さな存在が、壮大な空間、壮大な時間につながっているという感覚は、何よりも子供たちを熱くさせるはずだ。宇宙のなかに自分がいるのみならず、自分のなかに宇宙があるなんて、想像するだけで身体が熱くなってくる。