“世界がどれだけ同じで、どれだけ違うのか(『カーニバルがやってきた!(第279号)』)”
自分の目で確かめてきた男が、本号の作者、石川直樹だ。
ときに2000年、22歳の時だ。
「POLE TO POLE」と名づけられたその壮大な旅は、北極点から南極点まで一年をかけて、できる限り人力の移動手段で旅をしていくと言う国際プロジェクトです。
メンバーは世界7ヵ国、同世代の若者8人。
スタートは北極。移動はソリから始まる。犬が引いてくれるわけじゃない。自分で引っ張ってくのだ。ソリ含め60kgの荷物を!
宿泊の基本はテントだ。自然のなかであれ、街中を移動するのであれ。
私も学生時代、テント泊の徒歩旅行したことがある(『ぼくは盆栽(第126号)』)が、街中の空き地にテント張って寝るというのはけっこう勇気がいる。山登りの前泊に駅で寝たこともあるけど(STB (旅行))、女性だけのグループでは難しいし、若いうちしかできることではない。
男性が5人、女性が3人の男女混合のチームで、仲間同士の絆は日々深まる一方、ぶつかり合いや恋が生まれることもありました。
パナマから南米へは危険地域を避けるため、ヨットでの移動。歩いたり、自転車に乗ったり、カヤックを漕いでみたり、はたまたヨットの舵取りまでとは。道中サポートを受けながらとはいえ、失敗や事故やケガ・病気なども多かったことだろう。
だがしかし。
ぼくははっきりと喜びを感じており、心の奥底では、苦しさとは裏腹に、これらの日々が終わらないことを願っていました。
すげえなあ……。
私がこの本で驚いたのは、はっきりいって旅そのものではなく、作者の化け物みたいな体力の方だ。
旅の途中3日間フリータイムがあるが、そこでなんとコスタリカの最高峰セロチリポに登頂している。あれだけ身体酷使してる最中、さらに山に登るんか……。
「作者のことば」を見れば、ゴールした後さらにビンソンマシフ登りいったり、帰国途中アコンカグアを攻めにいったり。まあすでにデナリ登ってんだから(『アラスカで一番高い山 デナリに登る(第421号)』)当たり前のことかもしれない。それくらいじゃなきゃ「POLE TO POLE」を完走できるはずもないだろう。
大人の私は、作者の来し方に思いを馳せ「人生の輪郭となった長い旅」という言葉の意味にしみじみする。しかし子供たちにとってこの絵本は、自分たちの行く末、未来を描くものなのだ。
いつか僕も世界を旅してみたいな、と。
それも単なる観光旅行じゃなく、
人が行ったことのない場所に行ってみたい、
見たことのない風景を見てみたいって
ずーっと妄想してました。
作者にとっての、『トム・ソーヤーの冒険』や『十五少年漂流記』、『ロビンソンクルーソー』のように。
家の子は中学生。春休みを満喫中だ。
友達と電車で観光地に出かけたり、一人自転車で遠出したり。
親としては、せっかくのまとまった休み、勉強にも力を入れてほしいところだが「外に出ないと死んじゃう!」らしい。もう2年切ってんだけどなあ。高校受験まで。
自転車の遠出など、朝9時に出発し帰ってくるのは夕方5時半だ。途中送られてくる写真を見ると、家から軽く40キロは離れた街まで行ってるようだ。ダイシャクシギ見たよーとか、F-2飛んでたよーとか、実に楽しそう。
母親としては、こんな小さな「旅」であっても無事を祈るほかはない。これからどんどん遠くへ行ってしまうのだろうなあ。私の手など振りほどいて。ちょっと前まで、彼のちっちゃな手を握りしめていたはずなのに。