こどもと読むたくさんのふしぎ

福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」を読んだ記録です。

絵で読む 子どもと祭り(第400号)

名作『やこうれっしゃ』を描いた西村繁男の手による、たくさんのふしぎ第400号!

昨年から400号も近いなあと思っていて、どんな本になるのか楽しみにしていた。

予想以上に素敵な本に仕上がっている。その辺に置いてあると手に取って開きたくなる、パッと開いたところを眺めては閉じ、また手に取って読みたくなる。そんな不思議な絵本だ。

第300号と同じく、この本を見て何か考えさせられたり、驚かされるということはない。ここに出てくるお祭りは、どれもこれも見たことがないし、名前すら知らないものもある。でもこんなお祭りがあるんだと感心するよりはむしろ、無心に絵を眺め、ひたすら細部まで目をやることに没頭してしまう。まさに”絵で読む”に相応しい本だ。

お祭りのハイライト部分を中心に据えて描かれているものの、決してそこだけにスポットが当てられているわけではない。メインで参加する人々のみならず、観客含めその周囲の人々も等しく詳しく描かれている。詳しく描き込んでもうるさく感じさせないのは、さまざまな“観察絵本”を作り出してきた西村氏ならではの技だ。

どこのお祭りにも”参加”している「猫のこきち」もいい味出している。ウォーリーよろしく、こきちどこにいるかなーと探すのも、子供にかえったみたいで本当に楽しい。

西村氏は、よさこい祭り発祥の地である高知出身。しかし「作者のことば」によると「子どもの時の祭りの体験がなく、これまで人生で積極的に祭りに参加したこともない」という。特定のお祭りに思い入れがないからこそ、特別感というより、日常の延長線上にあるところの「お祭り」を描けるのかもしれない。

合わせて、たくさんのふしぎ400記念連載も楽しみに読もうと思っている。

<2022年7月19日追記>

中にはいってみよう(第306号)』で予告した、第301号〜400号までの記事一覧を発行番号順にご紹介する。

第301号 重さと力 科学するってどんなこと?
第302号 昆虫少年の夢 オオムラサキ舞う森
第303号 ゆかいな聞き耳ずきん クロツグミの鳴き声の謎をとく
第304号 キタキツネのおかあさん
第305号 もじのカタチ
第306号 ふしぎな動物たち
第307号 木? それとも草? 竹は竹
第308号 中にはいってみよう  
第309号 ハクチョウの冬ごし
第310号 観覧車をたずねて
第311号 月へ行きたい
第312号 さくら 私のスケッチブックから 
第313号 野生動物の反乱
第314号 エゾクロテンのすむ森で
第315号 エネルギー
第316号 バシリスク 水の上を走るトカゲ
第317号 まちぼうけの生態学 アカオニグモと草むらの虫たち
第318号 おもしろい楽器 中南米の旅から
第319号 クラゲは花
第320号 森はみんなの保育園
第321号 これ、わたし
第322号 まぼろしの大陸スンダランド オランウータンをそだてた森
第323号 立山に咲くチングルマ
第324号 コテングコウモリを紹介します
第325号 ゴリラが胸をたたくわけ
第326号 琉球という国があった
第327号 ジミンちのおもち
第328号 ヒトスジギンポ 笑う魚
第329号 ウナギとりの夏
第330号 森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して
第331号 空のみち 飛行機と航空管制官
第332号 かしこい単細胞 粘菌
第333号 南極のさかな大図鑑
第334号 桜島の赤い火
第335号 おおきな石
第336号 アオムシの歩く道
第337号 わが家は、野生動物診療所
第338号 みんなでつくる1本の辞書
第339号 コーヒーを飲んで学校を建てよう キリマンジャロとルカニ村
第340号 街は生きている
第341号 ウミショウブの花
第342号 生きる
第343号 マチュピチュをまもる アンデス文明5000年の知恵
第344号 雪虫
第345号 スズメのくらし
第346号 虹色いきもの図鑑
第347号 カリブーをさがす旅
第348号 富士山のまりも
第349号 貨物船のはなし
第350号 みんなそれぞれ 心の時間
第351号 家にいたイリオモテヤマネコ
第352号 一本の木に葉っぱは何枚?
第353号 小さな南の島のくらし
第354号 サメは、ぼくのあこがれ
第355号 木のぼりゴリラ
第356号 村を守る、ワラのお人形さま
第357号 マダガスカルのバオバブ
第358号 暗闇の釣り師グローワーム
第359号 イースター島 ちいさくて大きな島
第360号 クモと糸
第361号 いのちのひろがり
第362号 木の実は旅する
第363号 川のホタル 森のホタル
第364号 おいかけっこの生態学 キスジベッコウと草むらのオニグモたち
第365号 しっぽがない! コアラとヒトのしっぽのなぞ
第366号 カタツムリ 小笠原へ
第367号 食べられて生きる草の話
第368号 神々の花園
第369号 南極の生きものたち
第370号 トドマツ
第371号 へんてこ絵日記
第372号 家をせおって歩く
第373号 昆虫の体重測定
第374号 ナミブ砂海 世界でいちばん美しい砂漠
第375号 富岡製糸場 生糸がつくった近代の日本
第376号 四万年の絵
第377号 分水嶺さがし
第378号 川は道 森は家
第379号 いちくんと古太鼓
第380号 わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話
第381号 カリブーの足音 ソリの旅
第382号 線とあそぼう
第383号 ゆきがうまれる
第384号 チョウのすきな葉っぱの味
第385号 宇宙とわたしたち
第386号 野生のチューリップ
第387号 石油のものがたり
第388号 すれちがいの生態学 キオビベッコウと小道の虫たち
第389号 動物たちが教えてくれる 海の中のくらしかた
第390号 アリになった数学者
第391号 海のかたち ぼくの見たプランクトン
第392号 水辺の番人 カワウ
第393号 昭和十年の女の子 大阪のまちで
第394号 地蔵さまと私
第395号 みんなで龍になる 長崎の龍踊り体験
第396号 カブトムシの音がきこえる 土の中の11か月
第397号 森の舞台うら
第398号 海中を飛ぶ鳥 海鳥たちのくらし
第399号 10才のころ、ぼくは考えた。
第400号 絵で読む 子どもと祭り

 

※この辺りのバックナンバーは図書館にそろっているところもあります。「たくさんのふしぎ傑作集」として出版され、現在でも入手可能なものもあります。